本来、五木先生の薦める本など決して手に取る評者ではなかった。 しかし、本書は不覚にも手にとってしまった。 佐村河内という作曲家については全く無知であったが、とにかく天才であるらしい。その作品を聴いたことがないから何とも言えない。しかし、少なくとも文章の天才ではないことだけは間違いない。何よりも芸術家とは思えない客観的な視点の欠如だ。もちろん、それこそが芸術家の証しかもしれないと思わぬでもない。過去にはダリや岡本太郎など客観視どころか独りよがりスレスレあるいはそのものの文章を書く「天才」がいたことは存じている。 それにしても、それ以前に、本書を読んでいると様々な事実問題についての疑問が湧いてくる。 ボランティアに費やした時間と労働体験の時間的比率はどうなっているのか? 少女との出会いと感動的な「奇跡」(亡くなった弟名を少女が口走ったエピソード)の時間と配偶者との生活の比率はどうなっているのか