奈良の事件に対して、火をつけるより先に何故親父をぶん殴らなかったんだという意見がありましたが、常人であれば、父親というのはなかなか殴れるものではありません。「親に手を出してはいけない」という古典的な倫理観とは別に、一つ屋根の下で食わしてもらっていて、かつ学費出してもらっているうちは難しい。特に上級学校に進みたいなどという、人並みの世俗的欲求がある人は、自分の首を絞めてしまうことになると躊躇してしまうものです。案ずるよりも、いっそケツをまくって挑みかかった方が途は開けるかもしれないのですがね。まあ、それだけ親というのは子供の生殺与奪の権利を握る絶対的存在なわけです。 『美味しんぼ』の海原雄山と山岡士郎の父子の相克もそうです。中学に入ると、厳しくも偉大な父の雄山が主宰する美食倶楽部の厨房に放り込まれてしごかれた息子の士郎ですが、彼は典型的なエディプスコンプレックスの持ち主です。母親が雄山に虐待