映画評論家の白井佳夫氏が解説する。 「蟹江敬三は、その昔『アートシアター新宿文化』という映画館で、蜷川幸雄演出の演劇に主演していた。当時は『蟹江が舞台に立つと妖気が生ずる』と言われ、それを見て、あの蟹江という役者は何だと衝撃を受けた多くの演出家や監督が、次から次へと蟹江を使いたがった。ロマンポルノなど絡みを大胆に描く映画、特に強姦犯など性犯罪者を演じさせると、とんでもない不気味さで、いきなり人を刺してしまうような現代の恐怖を体現できる数少ない役者だった」 蟹江の唯一無二の演技は、特撮モノでも本領をいかんなく発揮する。封印映像に詳しいライターの天野ミチヒロ氏が言う。 「中でも『ウルトラマンA』での牛にたたられるカウラ役や、『ウルトラマンレオ』での星人ブニョ役でレオをバラバラにしてしまう怪演は、強烈なインパクトを残していますね」 そして、還暦を過ぎた蟹江は、初めて映画「MAZE~南風」(アルゴ