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ブックマーク / booklog.kinokuniya.co.jp (4)

  • 『思い出を切りぬくとき』萩尾望都(河出文庫) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 今年六十になる友人知人を思い浮かべてみる。彼らについていちどは、この人は萩尾望都と同い年、と思ったものである。自分がまだ二十代の頃は、二十一年長の人はとてつもなく大人にみえたもので、その頃から萩尾望都は私のなかではこの世代の代表だった。こちらももう四十となれば、その年の差もさほど気にならなくなっていて、親しみをもって語り合える人もおり、そこでふたたび彼らは萩尾望都と同年、と思うとやはりそこにはある種の感慨がある。萩尾望都が漫画家となって、今年で四十年だという。 その、四十年を記念して、と帯にはあるが、書は七十年代半ばから八十年代半ばにかけて書かれたエッセイをまとめた単行の文庫化であって、そこにいるのは二十代後半から三十代後半の作家である。このたびの文庫化にあたっての「まえがき」には、若書きの文章に対するテレをさらりと書きつけている著者であるが、その、そっけないくら

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  • 『醜の歴史』 エーコ (東洋書林) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 『美の歴史』の姉妹編である。造もレイアウトも『美の歴史』を踏襲した画集・詞華集となっているが、ひとつ異なる点がある。文の活字が一回り小さいのだ。『美の歴史』は 1行33字だったが、こちらは 1行に36字詰めこんでいる。あてずっぽうだが『美の歴史』より文字量が二割か三割多いようである。 なぜ『醜の歴史』の方が文字が多いのだろう。一つ言えるのは「美」は「美」単独で語れるが、「醜」の方は単に「醜い」だけではとして成立しないことがある。虫の好かないものも巧みに模倣されれば美となるというアリストテレスの言葉が序文に引かれているように、書があつかう「醜」は美的対象に高められた「醜」なのだ。 もう一つ、幸福な家庭は似たりよったりだが、不幸な家庭はそれぞれ違うと書いた作家がいたが、「美」と「醜」では「醜」の方がはるかに多様なこと。書を開けば歪んだり、崩れたり、責められたり、

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  • 『摘録 断腸亭日乗(下)』永井荷風(岩波文庫) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「永井荷風の被災日記」 々とした日々が続いている。大震災直後には閃光のように現れたかのように思えた、被災者同士の相互扶助的な「災害ユートピア」が、企業とメディアを中心とした抑圧的で官僚的な「自粛」ムードによってかき消されている(何より見えない汚染物質をまき散らす原発事故のせいだが)。街を歩けば、あちこちの商店に「被災者にお見舞い申し上げます」という言い訳めいた紙切れが貼ってあり、ACのテレビコマーシャルも、老人へのいたわりや友達との言葉のやりとりを主題にした優しいものから、有名人たちが節約や節電を推奨したり、「日は強い。みんなで力を合わせれば乗り越えられる」と強がってみせるような説教臭いものに変貌している。いったい、何なのだ。これでは「贅沢は敵だ」とか「進め一億火の玉だ」といった戦時中の標語と何も変わらないではないか。誰も気ではないのに、誰もが世間を配慮すること

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  • 『罪と罰』本村洋 宮崎哲弥 藤井誠二(イーストプレス) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「犯罪被害者遺族を代表することになった一人の父親が10年の戦いを振り返る」 と愛娘との幸福な生活をしていた平凡な夫、父親。村洋さん。村氏は、1999年4月、当時18歳の少年によって子を惨殺された。ほどなく警察は少年を逮捕。悲しみの中、木村氏は加害者少年には厳罰が下されると思っていた。しかし、少年法の壁が立ちふさがった。非公開が原則の少年審判という名の、被害者を蚊帳の外に排除した「裁判」制度。被害者は実名報道されるが加害者は匿名を保障される。加害者少年は更生を期待され法の保護のもとに置かれるが、被害者の救済制度はまったくない。 被害者遺族として、村氏は元少年に対して死刑を求めた。被害者感情として当然の要求だろう。しかし、その村氏の主張に対して、死刑廃止論者と言われる人たちが反論。ひとりの被害者遺族として当然の気持を語っただけで、政治的な論争に巻き込まれていっ

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