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ブックマーク / realsound.jp (21)

  • 『いだてん』すべてが繋がる宮藤官九郎脚本の本領発揮 浅野忠信の“悪役”っぷりも評判に

    11月10日に放送された『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』(NHK総合)第42回「東京流れ者」。政府によってオリンピック担当大臣に任命された政治家・川島正次郎(浅野忠信)が、田畑政治(阿部サダヲ)にジリジリと忍び寄る。 笑顔を絶やさず、飄々とした雰囲気を醸し出す川島だが、東龍太郎(松重豊)と会するシーンでは、発する言葉の節々に田畑や東に対する圧力が感じられる。第41回で田畑から「国民の一人一人がさ、“俺のオリンピック”だって思えるように盛り上げてくれよ、先生方!」と責め立てられたとき、川島は黙っていたが、その目は冷ややかだった。「日のオリンピック」「国民のオリンピック」と発した川島の面目をつぶすような田畑の発言に、苛立っているようにも見えた。しかし川島は、その苛立ちを直接ぶつけるようなことはしない。外堀を埋めるように田畑を追い詰めていくのだ。 川島は「オリンピックは経済成長の

    『いだてん』すべてが繋がる宮藤官九郎脚本の本領発揮 浅野忠信の“悪役”っぷりも評判に
  • 山崎まどかの『一度きりの大泉の話』評:萩尾望都が竹宮惠子に向けていた眼差しとその痛み

    1970年から1972年まで竹宮惠子と萩尾望都が同居し、そこに同世代の少女マンガ家「花の24年組」を中心とするメンバーが出入りして「大泉サロン」と呼ばれた借家。それは少年マンガにおける「トキワ荘」と並ぶ、少女マンガ文化におけるひとつの伝説だった。 萩尾望都の側から見た残酷な事実 『少年の名はジルベール』(小学館) 竹宮惠子が自伝『少年の名はジルベール』(小学館/2016)で「大泉サロン」時代の話を書くと、この伝説には新たなベクトルが加わり、より神話性が強まっていった。接近し過ぎた若い創作者同士の思わぬ齟齬。竹宮惠子はそれを天才・萩尾望都への自分の一方的な嫉妬として描いている。 萩尾望都の語り下ろしである『一度きりの大泉の話』(河出書房新社)は『少年の名はジルベール』そのものというよりも、竹宮のに対する反響で自分が被ったことへの返答として書かれている。これは単体で読む彼女の自伝というよりも

    山崎まどかの『一度きりの大泉の話』評:萩尾望都が竹宮惠子に向けていた眼差しとその痛み
  • 瞬間最大風速でネットを駆け巡った“例の漫画” 『腐女子除霊師オサム』に見るジャンプ+の凄み

    「少年ジャンプ+」で7月5日に公開された読み切り漫画腐女子除霊師オサム』がSNS上で早くも旋風を巻き起こしている。作者は「ゲタバ子」とクレジットされており、少なくともこの名前では知られていない、まったく無名の作家だ。 詳しくは実際に読んでいただきたいところだが、その内容を簡単にご紹介しよう。 いまどきのギャル=春山カイカの家に、正体不明の怨霊が出現した。ベテラン(?)の除霊師たちを頼るが成仏させることができず、彼らは「あんな猛り狂った怨霊見たことない!」「何言ってるかわからない」「理解不能」「他をあたってくれ!」と“除霊師カタログ”を押し付け逃げ出す始末。困ったカイカはそのカタログに、自分と同じ高校の制服姿の女子を見つけ、学校で声をかけることに。 除霊師としてカタログで紹介されていたのは、乾オサム。属性は陰キャラの漫画オタクだ。陽キャラのギャルに突然声をかけられ挙動不審に陥り、人とすら話

    瞬間最大風速でネットを駆け巡った“例の漫画” 『腐女子除霊師オサム』に見るジャンプ+の凄み
  • 『鬼滅の刃』鬼舞辻無惨はジャンプ史に残るボスキャラだ DIO、カーズ、シックスに連なる“悪の系譜”を読む

    鬼滅の刃』鬼舞辻無惨はジャンプ史に残るボスキャラだ DIO、カーズ、シックスに連なる“悪の系譜”を読む 悪鬼殺し(Demon Slayer)の物語 人類史上、最大のキャラクターが「キリスト」だとすれば、それに続くナンバー2のキャラクターは「悪魔」である……。漫画原作者、小池一夫はそんなことを語っている。(『大阪芸術大学 大学漫画』vol.1「小池一夫の誌上キャラクター原論」第1回)敵対者が邪悪で強大であるほど、それに打ち勝つヒーローの存在は輝くだろう。だから物語のヒーロー(主人公)は、個性的で、強く記憶に残る「ボスキャラ」を必要とする。 『鬼滅の刃』という物語も例外ではない。「鬼舞辻無惨」というボスキャラは、ジャンプ史に残るレベルの魅力で読者を惹き付け……、主人公たちからの「敵意」を徹底して引き寄せている。また、こうも言えるだろう。私たちは、「勧善懲悪」「正義の味方」といった言葉を聞くと

    『鬼滅の刃』鬼舞辻無惨はジャンプ史に残るボスキャラだ DIO、カーズ、シックスに連なる“悪の系譜”を読む
  • 前人未到の大河ドラマ『いだてん』はいかにして作られたのか 取材担当者が明かす、完成までの過程

    いよいよ最終局面に入った大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』(NHK総合)。オリンピックに関わった日人の姿を描いた作は、明治・大正・昭和という近代日を舞台にした歴史群像劇だ。劇中には実在した人々が登場し、一見荒唐無稽に見えながらも、ほぼ史実どおりに展開していくのだが、その背後では、気が遠くなるような膨大な量の取材が行われていた。 今回、リアルサウンド映画部では『いだてん』の「取材」を担当した渡辺直樹に、関係者遺族への許可取りも含めた取材現場の内幕について話を訊いた。渡辺が担った「取材」とは、宮藤官九郎の脚作り、その前段階の企画制作のための膨大な資料集め、および史実関係の事実確認など。前人未到の挑戦となったオリンピック大河はいかにして作られたのか?(成馬零一) 誰を主人公にするかも決まっていなかった ―― 渡辺さんが『いだてん』でもチーフ演出を務める井上剛さんの作品

    前人未到の大河ドラマ『いだてん』はいかにして作られたのか 取材担当者が明かす、完成までの過程
  • 『君の名は。』との共通点と相違点から、新海誠監督最新作『天気の子』の本質を探る

    2016年に社会現象といえる、思いがけない特大ヒットを記録した劇場アニメーションが公開された。新海誠監督の劇場長編作品『君の名は。』である。かつて一部のファンによって支持されてきた新海作品だが、この作品については広い観客に向け大規模公開され、とくに多くの若者の心をつかむ興行的成功を収めて大メジャー作品となったのだ。 熱狂は果たしてこの先も続いていくのか……? 続く新海監督の次作『天気の子』には、否応なしに熱視線が浴びせられることになった。さて、そんな期待高まる状況のなか、ついに公開された『天気の子』の内容はどうだったのだろうか。ここでは、前作『君の名は。』のヒットの理由もあわせて考察しながら、同時に作品の質を探るべく考察を進めていきたい。 まず、思った以上に前作の『君の名は。』に雰囲気が近しいというのが、第一印象だ。少なくとも表面的には姉妹作品と言っても良いくらいに、物語の語り方のみなら

    『君の名は。』との共通点と相違点から、新海誠監督最新作『天気の子』の本質を探る
  • “自由”な野村周平と“不自由”な賀来賢人 真逆コンビが描く『森山中教習所』の面白さ

    現在公開中の映画『森山中教習所』で主演を務めた野村周平と賀来賢人のコンビが話題となっている。豊島圭介による同名原作コミックを映画化した作は、非公認教習所でおこった一夏限定の青春を描く。野村演じる物事に無頓着で脳天気な大学生・清高と賀来演じるクールで根暗なヤクザ・轟木、2人のなんともいえない距離感と、日常感溢れるのにどこかファンタジー的な雰囲気が物語に奥行きを出している。 物語の始まり方が何と言っても強烈だ。清高が岸井ゆき演じる松田に「やっぱりダメだった」と言い放ち、あっさり別れを告げるシーンからスタートする。いきなり振られる松田も戸惑い混乱するのだが、観ている方も意表をつかれ唖然となる。そして「腹減ったな〜」と独り言を呟きながら自転車に乗っていた清高がものすごい勢いで車に轢かれる。「え!?」と思わず声を出してしまうほどのはねられっぷり。運転していた轟木が車から出て来るのだが、びっくりする

    “自由”な野村周平と“不自由”な賀来賢人 真逆コンビが描く『森山中教習所』の面白さ
  • “若手バイプレイヤー”賀来賢人 & 吉村界人、イケメン役からの脱却 『わにとかげぎす』での怪演ぶり

    園子温監督の映画『ヒミズ』(2012年)、吉田恵輔監督の映画『ヒメアノ~ル』(2016年)に続き、古谷実の漫画を映像化した作品として注目を集めているドラマ『わにとかげぎす』(毎週水曜23時56分~/TBS系)が、いよいよ佳境に突入しようとしている。 思いのほか自然体の芝居で主人公・富岡を好演している有田哲平(くりぃむしちゅー)と、彼に一方的な恋心を寄せる隣室の女・羽田を振り切った芝居で演じている田翼。メインキャストである2人の、どこか噛み合わない会話とやり取りが、最大の見どころである作。しかし、ここで筆者が注目したいのは、このドラマに、昨今映画やドラマを観ていて、ちょっと気になっている……というか、さまざまな映画やドラマで、ひときわ異彩を放つ役柄を怪演し、もはや“若手バイプレイヤー”とも言うべき強烈な存在感を打ち放っている2人の俳優――賀来賢人と吉村界人が、奇しくもこのドラマで相まみえ

    “若手バイプレイヤー”賀来賢人 & 吉村界人、イケメン役からの脱却 『わにとかげぎす』での怪演ぶり
  • 『架空OL日記』は月曜日の憂鬱を忘れさせる バカリズム主演ドラマの革新性

    『架空OL日記』を見ている人は、あんなOL生活はないと思うのか、それとも、あれこそOLの実態だと思うのだろうか。 自分は、地元で約6年、上京して2年、OL生活をしたことがある。上京する前にもお金を貯めようと3か月と決めてお硬い会社で派遣をやったこともある。そのとき以外は制服こそなかったが、昼には堂や会議室でお昼ごはんを同僚たちとべたし、会社帰りにどこかに一緒に行くこともあった。 たまには、ひとりでお昼をべようと思う日もあったが、お昼に会議室のテレビを見ながら、みんなでうだうだ話すのは楽しかった。たまに、テレビを見ていておとなしそうな女性から、辛辣でとんでもなく的確な批評が飛び出したりもして、彼女以上の批評家はいないのではないかと思い出したりもする。デリカシーのない上司へのつっこみが、女性たちの連帯を生むこともあった。ときおり空気を読まない子の発言にイラっとしても、心の中でつっこむこと

    『架空OL日記』は月曜日の憂鬱を忘れさせる バカリズム主演ドラマの革新性
  • 峯田和伸×麻生久美子×岡田惠和、夢の布陣はなぜ実現した? 河野英裕P『奇跡の人』インタビュー

    銀杏BOYZの峯田和伸にとって連続ドラマ初主演作となる『奇跡の人』がBSプレミアムで4月24日(日)から放送される。相手役は『アイデン&ティティ』で恋人役を演じた麻生久美子、オリジナル脚は岡田惠和と、ドラマ好き、カルチャー好きにはたまらない布陣である。この魅力的な企画を手がけたのは、日テレビで数々の名作ドラマを手がけてきた日テレアックスオンの河野英裕プロデューサー。その河野氏を直撃した。 「障害を扱うからには真正面からひるまずにぶつかりたかった」 ——河野さんがNHKで放送するドラマを作ると知って、驚きました。今回のドラマはどういう経緯でスタートしたのですか? 河野英裕プロデューサー(以下、河野):一年以上前、どうやったらみんなが興味を持ってくれる間口の広いドラマが作れるだろうと考えていたときに、ヘレン・ケラーをモチーフにしたオリジナルドラマをやってみたいと思ったんです。2014年の秋

    峯田和伸×麻生久美子×岡田惠和、夢の布陣はなぜ実現した? 河野英裕P『奇跡の人』インタビュー
  • 1979年はなぜ歌謡曲にとって特別な年だったか 栗原裕一郎が話題の書に切り込む

    冨田恵一の『ナイトフライ 録音芸術の作法と鑑賞法』(DU BOOKS)はドナルド・フェイゲンのソロアルバム『The Nightfly』を1冊かけて分析しただが、80年代に音楽制作に起こったイノベーションが裏のテーマとしてあった。冒頭で冨田は、70年代から80年代への変化というのは、徐々に進行したのではなく、デジタル時計が切り替わるように一息に完了したのだと書いていた。 「文化的にも70年代は文字通り79年12月31日を持って終了し、80年1月1日から明確に80年代は始まった、とのイメージさえ持つことができた」 さすがに1月1日からというのは誇張としても、歌謡曲のフィールドでも79年から80年にかけての変化というのは劇的なもので、80年に登場した松田聖子には70年代までの光景をガラリと塗り替えてしまったようなインパクトがあった。 ただし聖子という現象は突発的な事故ではなかった。70年代に歌

    1979年はなぜ歌謡曲にとって特別な年だったか 栗原裕一郎が話題の書に切り込む
  • なぜギタリストはステージでチューニングをするのか 兵庫慎司が“積年の謎”に迫る

    ライブ中にステージ上でミュージシャンが行う、ギターやベースのチューニング。あれ、どんな意味があるのだろうか。 曲間でボーカルがMCをしている時に、チューニングをしているのはまだしも、客電が消えSEが流れ、ステージに登場してアンプ脇に立てられていたギターを手にし、いきなり1弦ずつチューニングを確かめ始めるギタリスト。みんながみんなそうではないが、けっこうな頻度で目撃する。その間、こっちは演奏スタートを待ってぼーっとSEを聴いていなきゃならないことになる。そもそもギターはきっちりチューニングが合った状態でそこに置かれているはずなわけで、あれ、意味あんの? 何年か前に、その筋のプロである知人ふたりにたずねてみたことがある。ひとりは元々楽器店で働いていて、レコード会社へ転職して以降一貫して制作畑で仕事をしてきたディレクター(仮にYとします)。もうひとりはさまざまなバンドを手がけてきて、今も日々大忙

    なぜギタリストはステージでチューニングをするのか 兵庫慎司が“積年の謎”に迫る
  • 海外と日本のバンドの「ドラムの違い」とは? 元アマチュアドラマー兵庫慎司が考える

    もうすぐフェスのシーズンが始まる。というか、一部ではもう始まっていますね。6月16日現在の段階で、私も既に3つ行きました。JAPAN JAM BEACH、METROCK、TAICO CLUBです。 で。ご存知のように、洋楽アーティスト主体で邦楽アーティストも出るフェスの代表は、フジ・ロック・フェスティバルとサマーソニックであって、よって現場では洋邦両方観て聴くことになるわけだが、そのたびに毎年思い知ることがある。 海外のバンドと日のバンドのライヴ・パフォーマンスにおいて、もっとも違うのはドラムだ、ということだ。 海外のバンドの方が圧倒的にいいのだ。日盤も出ていないようなバンドであっても、作品では打ち込みでライヴでのみ生ドラムを入れているようなバンドであっても、ドラムはすごくよかったりするのだ。会場を歩いていて、遠くのステージから知らない曲のイントロがきこえてきた場合、そのドラムの響きだ

    海外と日本のバンドの「ドラムの違い」とは? 元アマチュアドラマー兵庫慎司が考える
  • 「加護ちゃん好きだった小6のときに処女喪失」大森靖子が壮絶なハロプロ歴を明かす(1/2) - Real Sound|リアルサウンド

    気鋭のシンガーソングライターにして重度のハロヲタ(ハロー!プロジェクトのファンのこと)でもある大森靖子に、ハロプロのことについてのみ執拗に聞くインタビューの第2回。前回は好きなハロプロメンバーや現在のオタ活(ハロオタとししての活動)について聞いた。そこで今回は、そもそもハロプロを好きになったきっかけや、そこからアイドルに没頭してしまうにいたった経緯などについて語ってもらった。 第1回:「道重さゆみを見ていると泣いてしまう」気鋭のシンガー大森靖子が、モー娘。への偏愛を語る ――ハロプロを好きなったきっかけと、その時期を教えてください。 大森:私、(元モー娘。の)加護(亜依)ちゃんと同学年なんですよ。彼女が小6でオーディションを受けてた時から『ASAYAN』(テレビ東京)で見てて、同い年なのになんであんなに頑張ってるのかなって思って。ただ、当時は私も普通に子供だったので、子どもとして「あゆが好

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    amanoiwato
    amanoiwato 2014/09/24
    『クラスの女子のこともそういうエロい目で見始めて。机とかカバンとかを漁ったり、トイレを覗いたり』虐待の連鎖……。
  • 大友良英『題名のない音楽会』でノイズ語る「当時のスタンダードからするとビートルズはノイズ」

    昨年は大ヒットドラマ『あまちゃん』(NHK系)のオープニング、劇中音楽を手がけ、第55回日レコード大賞作曲賞を受賞を受賞するなどして、一躍人気者となった作曲家、大友良英。彼が4月13日放送の『題名のない音楽会』に出演し、自身のルーツとなる音楽や、彼自身の音楽観について語った。 冒頭、番組から「ノイズ・ミュージックの世界的権威でもある」と紹介された大友。司会の佐渡裕から「ノイズ・ミュージックを一言で言うと?」と質問された大友は「一言では言えないですが......ジャンルというよりは考え方というか。よくわからないところがまた面白い」と語った。 今回の放送では、大友良英が影響を受けたノイズ・ミュージック3曲を紹介。まず大友が1曲目に挙げたのは、ジミ・ヘンドリックスの「The Ster Spangled Banner」。『ライブ・アット・ウッドストック』の映像を見て、「かっこいいな」と思ったそう

    大友良英『題名のない音楽会』でノイズ語る「当時のスタンダードからするとビートルズはノイズ」
  • 佐村河内氏が記者会見で力説 「調性音楽の復権」はどのような文脈で登場したか

    全聾の作曲家として知られ、「交響曲第1番《HIROSHIMA》」などのヒットから一時は「現代のベートーベン」とも評された佐村河内守氏。しかし後の週刊誌のスクープにより、それらの楽曲の大半が音楽家の新垣隆によって手がけられていた、いわゆる「ゴーストライター」の手によるものであったことが明らかとなった。3月7日に行われた謝罪会見で佐村河内氏は次のように語っている。「私は70年間に渡る現代音楽というものに対して肯定的ではありませんで、昔の「調性音楽」というものの復権、そういう尖兵が現れて時代が変わればいいなあというような希望を持っておりました。当然この70年間続いたアカデミズムの伝統ですから、絶対に生きているうちにはこの長大な音楽、交響曲は演奏されないと思っておりました。でもそのことと、それを世に残しておく。いつか尖兵が現れて、時代が変わったときに「今の時代に見合うような音楽がここにもある」と誰

    佐村河内氏が記者会見で力説 「調性音楽の復権」はどのような文脈で登場したか
  • ストーンズは“ロックの果て”まで来た――東京公演を期に振り返るバンドの功績

    最高! という言葉しかなかった。ローリング・ストーンズの東京ドーム公演。今回、僕は全3夜のうち、初日と最終日の2回を観に行ったのだが、すべてひっくるめて、最高のロックンロール・ショーだった。 日替わりのセットリスト(とくに、オープニング曲は毎回変更された)、ファンからのリクエスト、「無情の世界」での日のコーラス隊の参加。さらに、ミック・ジャガーは日語MCを連発と、サービス満点。披露される曲はもちろんストーンズ・クラシック、いや、ロック・クラシックばかりで、ことに60年代後期の『レット・イット・ブリード』に代表される名アルバムからの曲に宿る魔力というか妖気のようなものには、今回も激しい緊迫感を覚えた。そして、熱狂のロックンロール・ナンバーの数々。こうした世界を今なおストーンズが表現しきるエネルギーをキープしていて、それを生で体感できただけでも、観に行った価値はあった。 また、最終日のリク

    ストーンズは“ロックの果て”まで来た――東京公演を期に振り返るバンドの功績
  • 大物公演続く「洋楽」来日事情 若手~中堅公演の実現には課題も

    ローリング・ストーンズ - 『ストーンズ・イン・エグザイル~「メイン・ストリートのならず者」の真実 [Blu-ray]』(ヤマハミュージックアンドビジュアルズ) ローリング・ストーンズが8年ぶりの来日公演を行っている。また昨年にはポール・マッカートニーが11年ぶりの日公演を行い話題となった。このところ洋楽ベテランミュージシャンの来日が続いているが、一方でそれ以外のリアルタイムで活躍している若手から中堅にかけてのミュージシャンについては、フェス以外での来日がめっきり減ってしまった感もある。かつては毎年のように来日公演を行っていたが、久しく日に来ていないミュージシャンも多い。世界的なブレイクを果たしたことも要因ではあるが、コールドプレイなどがその一つだろう。なぜ彼らのライブが日では行われなくなってしまったのだろうか。 海外ではそれなりに知名度のある洋楽ミュージシャンが来日公演を行わなくな

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  • 佐村河内守の別人作曲騒動が浮き彫りにした、「音楽」と「物語」の危うい関係

    バンドは解散できてもソロ・アーティストは解散できないという冗談があるけれど、「佐村河内守」は解散するのか。『週刊文春』2月13日号の告発記事や、6日に行われた新垣隆の記者会見の報道をみて、そう思った。 広島生まれで被爆二世の全聾の作曲家・佐村河内守のゴーストライターを、新垣が引き受けていたわけである。佐村河内は曲のコンセプトやイメージを新垣に伝える。桐朋学園大学非常勤講師で現代音楽家の新垣は、それを自らの音楽教養を用いて具体的な曲にした。実態としては2人のユニットだった。そのユニットも、新垣の謝罪会見によって終止符が打たれた。 私は、国内外200のバンドやユニットの解散理由をまとめた『バンド臨終図巻』(2010年。速水健朗、大山くまお、栗原裕一郎、成松哲との共著)というの執筆に参加したことがある。そこでは、誰が「作曲者」かということが、メンバー間の緊張が高まる理由として散見された。「あ

    佐村河内守の別人作曲騒動が浮き彫りにした、「音楽」と「物語」の危うい関係
  • ダフト・パンクのグラミー賞パフォーマンスは、なぜ“歴史的事件”だったのか

    今年のグラミー賞で、なんといっても最大の話題を集めたのはダフト・パンクだろう。もちろん主要2部門含む5部門制覇という受賞結果も快挙だが、音楽ファンにとってその何倍ものインパクトと感動を与えてくれたのが、当日の彼らのライブパフォーマンスだった。そもそも、ダフト・パンクがテレビに出演するのはこれが6年ぶり(2008年、同じくグラミー賞でカニエ・ウェストのパフォーマンス中にサプライズ出演して以来)。ライブ自体も、4年前に盟友フェニックスのニューヨークでのライブにサプライズ出演したのが最後。昨年も、『ランダム・アクセス・メモリーズ』リリース直前に開催されたアメリカのコーチェラフェスティバルや、何故かオーストラリアの田舎町で行われた世界最速リスニングパーティーに姿を現すのではないかという噂が世界中で飛び交ったが、結局現れることはなかった(なのに、同時期に開催されていたF1のモナコ・グランプリのピット

    ダフト・パンクのグラミー賞パフォーマンスは、なぜ“歴史的事件”だったのか