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ブックマーク / saebou.hatenablog.com (15)

  • 須藤にわかさんの私に対する反論記事が、映画史的に非常におかしい件について - Commentarius Saevus

    先日アップされた私が『ダーティハリー』を批評したこちらの太田出版のエントリについて、須藤にわかさんという方が反論をしていました。 ohtabookstand.com note.com 簡単に説明すると、須藤にわかさんは私がアメリカンニューシネマ(1960年代末から70年代頃のハリウッド映画の新しい潮流をざっくり指す言葉)について嘘ばかり言っているとおっしゃっておられます。須藤さんがアメリカンニューシネマがお好きなのはわかりますが、これはまったく歴史的な経緯をふまえていない議論です。むしろ須藤さんのエントリのほうが、現在の映画批評で言われていることに比べるとだいぶ違うので、アメリカンニューシネマあるいはNew Hollywood(上記記事で触れているように、これは日語と英語では微妙にズレた意味で使われることもあると思いますが)について大きな誤解を招く可能性があると思います。私は基的に、先

    須藤にわかさんの私に対する反論記事が、映画史的に非常におかしい件について - Commentarius Saevus
  • 神が死んだことはわかってる、でも冒涜はする~無神論者のためのポストモダンホラー『ミッドサマー』(ネタバレ) - Commentarius Saevus

    アリ・アスターの新作『ミッドサマー』を見てきた。 www.youtube.com ヒロインであるダニー(フローレンス・ピュー)はもともと精神的な不安を抱えていたが、妹が両親を無理矢理道連れにして自殺して以来、不眠やパニックアタックに悩まされるようになっていた。そんな中、あまり関係良好とはいえない恋人で文化人類学の博士課程院生であるクリスチャン(ジャック・レイナー)が、友人であるペレ(ヴィルヘルム・ブロングレン)の故郷であるスウェーデンのホルガ村に伝統的な夏至祭を見に行くことを知る。ダニーもこの夏至祭体験に参加することにするが、ホルガ村のお祭りにはいろいろ謎があり… 一応お話としては、誠実とはいえない恋人から離れられず、悩んでいる若い女性が、ふさわしくない相手とのお付き合いを捨ててある種の「解放」を得る、というものである。この「解放」過程が宗教に入ること、というのは『アナと雪の女王2』だし、

    神が死んだことはわかってる、でも冒涜はする~無神論者のためのポストモダンホラー『ミッドサマー』(ネタバレ) - Commentarius Saevus
  • 献血ポスター問題について - Commentarius Saevus

    ここ3週間近く議論が続いている『宇崎ちゃんは遊びたい!』献血ポスターについて、このようなtogetterまとめが投稿されました。 togetter.com これは吉峯耕平弁護士が私と行った議論をまとめたセルフまとめです。セルフまとめで相手の議論について「saebou先生の反倫理的な「すごく高い倫理」」などという中立性に欠けるタイトルをつけるのはどうかと思いますが、あまりにも偏ったまとめであること、またこの話が始まって以来、全く私がしている話を見ずにデマに近い内容を流してくるツイッターアカウントや嫌がらせをしてくるツイッターアカウントが後を絶たないため、自分の意見をまとめてここに書いておこうと思います。 1. どうして私が献血にこだわっているのか 2.理念をどう広告に出すか 3. 作品の倫理的側面について議論するのは法律でも、規制でもない 4. 広告は他の芸術と違う 5. オタク文化だけ攻撃

    献血ポスター問題について - Commentarius Saevus
  • 女王を称えてるだけ~『ボヘミアン・ラプソディ』における、クイーンの外に広がる闇 - Commentarius Saevus

    『ボヘミアン・ラプソディ』を見てきた。言わずと知れたクイーンの伝記映画である。 www.youtube.com 主人公であるザンジバル生まれのパールスィー家庭の息子フレディ(ラミ・マレック)がギターのブライアン(グウィリム・リー)とドラムのロジャー(ベン・ハーディ)のバンドに入り、ベースのジョン(ジョゼフ・マゼロ)も加入して大成功するが、やがてフレディは自分がゲイ(あるいはバイセクシュアル)だということを自覚しはじめ、恋人のメアリー(ルーシー・ボイントン)とも以前ほどうまくいかなくなってきたり、バンドとも亀裂が生じていろいろなトラブルを経験し、やがてエイズになったことがわかるが、ライヴエイドで奇跡の復活を…という話である。 とりあえず私のクイーンに対する思い入れが相当偏っているからかもしれないと思うのだが(初めて自分のお金で買ったシングル盤はフレディ追悼盤「ボヘミアン・ラプソディ」だった)

    女王を称えてるだけ~『ボヘミアン・ラプソディ』における、クイーンの外に広がる闇 - Commentarius Saevus
  • ケイト・ブッシュの『嵐が丘』解釈にもの申す - Commentarius Saevus

    ケイト・ブッシュの曲で、「嵐が丘」(Wuthering Heights)という大ヒット曲がある。 (ビデオが怖いので注意) もちろんこの曲の元ネタはエミリー・ブロンテの『嵐が丘』で、私は小説もこの歌もとても好きなのだが(高校生の時にこれを聴いてて母に「何サンマの『恋の空騒ぎ』の歌を聴いてるんだ」と言われてショックを受けたこともあるが)、私はこの歌にかねがね疑問があった。なぜかというと、どの解説を読んでもこの歌は「キャシーの視点から書かれている」とあるのだが、そうなると最初の二連がおかしくなると思うのである。 「嵐が丘」の歌詞はこんな感じなのだが、第一連の"You had a temper, like my jealousy / Too hot, too greedy / How could you leave me / When I needed you / To possess you?

  • 働いたら負け、現代思想家には死を、そしてただ手を動かしてアートを〜『ムード・インディゴ うたかたの日々』 - Commentarius Saevus

    『ムード・インディゴ うたかたの日々』を見てきた。 私、1968年にフランスで映画化された『うたかたの日々』を高校生の時に見てなんて変な映画だ…と思った覚えがあり、今回もなんてったってミシェル・ゴンドリー監督なのですごく変な映画を期待していったのだが、こんなに「働いたら負け」「現代思想家とか信じるなボケ」っていう作品だったっけ…と思ってしまった。 お話は女性が難病にかかって愛する夫に看取られて死んでいくというどうしようもない陳腐なものなのだが、とにかくいろんなところにひねりがあるので普通の難病ものとしては見られないと思う。「を看病するために全てを投げ打って全裸で働く夫」とか、ちょっと難病もののパロディなんじゃないかという気すらする。 この映画はとにかく全編「働きたくない」という気分に満ち溢れた作品である。主人公のコランは遺産があって働かなくてもいい身分だが、愛クロエが胸に睡蓮が咲く病気

    働いたら負け、現代思想家には死を、そしてただ手を動かしてアートを〜『ムード・インディゴ うたかたの日々』 - Commentarius Saevus
  • 歴史は繰り返す〜斉藤光政『偽書「東日流外三郡誌」事件』 - Commentarius Saevus

    斉藤光政『偽書「東日流外三郡誌」事件』(新人物往来社、2010)を読んだ。ニセ歴史に興味ある人の間では前から有名らしいの文庫版である。 偽書「東日流外三郡誌」事件 (新人物文庫 さ 1-1)posted with amazlet at 13.09.05斉藤 光政 新人物往来社 売り上げランキング: 119,321 Amazon.co.jpで詳細を見る 著者はジャーナリストで学者ではないのだが、東奥日報の司法担当の記者だったのがふとしたことからあやしい古文書『東日流外三郡誌』関連の著作権問題訴訟を調査することになり、どんどん(いい意味で)深みにはまっていって偽書の疑いもある古文書の真贋問題に関して粘り強い取材を続けていくという話になっている。 まずはニセ歴史に関するとして面白い。今からすると、東北の歴史を覆すような内容が書いてあると言われる『東日流外三郡誌』は和田家文書というもののひとつ

    歴史は繰り返す〜斉藤光政『偽書「東日流外三郡誌」事件』 - Commentarius Saevus
  • どうして『アナと雪の女王』のクリストフには財産がないのか〜女相続人の文芸史(注意:山ほどネタバレあり) - Commentarius Saevus

    数日前からツイッターでこんなのが話題になっている。 夏野剛×黒瀬陽平×東浩紀「男たちが語る『アナと雪の女王』——なぜクリストフは業者扱いなのか」 タイトルが明らかに釣りで、さらに登壇者がこの通りなのでずいぶんと批判が多いのだが、まあこの面子だと過去の文学的・映画的伝統をディズニーがどうふまえてるかとかは全然出てこないかもしれないと思うので(他はよくわからないがとくに三番目の論者は歴史に全然興味がないだろう)、とりあえず「クリストフに財産・身分がない」ことの背景にはどういう文芸の伝統があるのかっていう話を、「女相続人もの」の歴史を使ってちょっと分析していきたい。この「女相続人もの」というのは日の文芸だとそんなにメジャーな伝統ではないように思うのですんなり理解しにくいところがあると思うのだが、これを知っていたほうがたぶん『アナと雪の女王』のみならずいろんなアメリカのロマンティック・コメディ映

    どうして『アナと雪の女王』のクリストフには財産がないのか〜女相続人の文芸史(注意:山ほどネタバレあり) - Commentarius Saevus
  • ロックバンドやミュージシャンが、会社やマネージャーに文句を言うために書いた曲の数々 - Commentarius Saevus

    突然だが、ポピュラー音楽には「バンドが会社やマネージャーに文句を言うために書いた曲」というジャンルがある。ポピュラー音楽は芸術でありかつビジネスであって、まあ芸術家っていうのはどんなジャンルでもけっこう浮き世離れしているもんだが、それを売る興行主のほうは昔からあくどいビジネスばかりしていると相場がきまっているもんだ(というのは単純化しすぎだろうが、そういうこともある)。それでバンドやミュージシャンがレーベルやマネージャーに騙されたりすることもよくあるわけだが、そういう場合、芸術家はその怒りを歌にして表現する。ちょっと今日はそういう歌をリストしてみたいと思う。 ・レーナード・スキナード'Workin' for MCA'(1974) Lynyrd Skynyrd Workin' For MCA 「さっさと契約してくださいよ!」みたいな歌詞なのだが、けっこうユーモアのある曲だと思うので、辛辣さは

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  • 理想宮か、公共彫刻か?〜『アナと雪の女王』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    『アナと雪の女王』を見てきた。私、ディズニーが大っきらいなので金を払って見に行きたくなかったのだが、あまりの評判の良さに敵の軍門に降ってしまった… 好き嫌いはともかくとして、見た後最初の感想は、「これは女子のスター・ウォーズになる」ってことである。今まで「女子のスター・ウォーズ」と呼ばれている作品は『ダーティ・ダンシング』であった。男の子がジェダイに夢中になっている間、女の子は『ダーティ・ダンシング』の台詞を引用しているのだそうだ(私はジェダイ派)。しかしながら『アナと雪の女王』は一言で言うと「暗黒面に堕ちなかったアナキン」の話である。アナキンのフォースもエルサの魔力も非接触型ハンドパワーであるし(←ごめん、もっと気の利いた言い方を思いつけばいいんだけど)、どちらも怖れによって暗黒面に堕ちかけるのだが、怖れを克服できなかったアナキンに対してエルサは愛の力により勝利する。とにかくよくできた映

    理想宮か、公共彫刻か?〜『アナと雪の女王』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus
  • 『ホーリー・フライング・サーカス』(Holy Flying Circus)〜モンティ・パイソン『ライフ・オブ・ブライアン』公開時の騒動をめぐるテレビドラマ - Commentarius Saevus

    モンティ・パイソン『ライフ・オブ・ブライアン』公開時の騒動をめぐるテレビドラマ『ホーリー・フライング・サーカス』(Holy Flying Circus)を見た。普段全くといっていいほどテレビを見ない私だが、今回ばかりは見ないとと思ってBBC4オンラインでチェック!(ここで見られるのだが、たぶん英国国内からしかアクセスできない?)『ライフ・オブ・ブライアン』は1979年の映画で今では古典的コメディ映画と見なされているが、キリストの生涯を痛烈に諷刺しているということで公開当時は凄まじい反対運動があり、"Most Controversial Films Top 10"とかには必ず選ばれる映画である。 このテレビドラマは映画が完成した時から、パイソンズがクリスチャンチームとテレビ討論で戦うまでを描いた歴史もの…なのだが、なんてったってパイソンズが主人公ということで演出が異常にふざけており、現実のパ

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  • ロックの未来は過去にしかないのか?サイモン・レイノルズ『レトロマニア―大衆文化の過去中毒』 - Commentarius Saevus

    Simon Reynolds (サイモン・レイノルズ), Retromania: Pop Culture's Addiction to Its Own Past 『レトロマニア―大衆文化の過去中毒』(Faber and Faber, 2011)を読んだ。 Retromania: Pop Culture's Addiction to its Own Pastposted with amazlet at 13.08.26Faber and Faber Rock Music (2011-06-02) Amazon.co.jpで詳細を見る サイモン・レイノルズは以前ブログでとりあげた『ポストパンク・ジェネレーション 1978-1984』の著者で、あとThe Sex Revolts: Gender, Rebellion, and Rock ‘n’ Rollにも関わっており、私のお気に入りの音楽批評家

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  • ロンドン交通博物館 - Commentarius Saevus

    ロンドン交通博物館に行ってきた。 入り口、いきなり世界各地の都市交通網路線図を紹介するパネル。 東京の都市交通。ひょっとしてここ、日から来る鉄オタが多いのかな? 漢字とインドの文字の夢のコラボ。 ロンドン市内の交通の歴史の展示。 ロンドンの市バスには車体にでっかい広告がついているのだが、これは市内交通が整備され始めた途端に始まったものらしい。 最初の鉄道。 初期の地下鉄工事の様子。危険そう。 昔のチケット。 たくさんの車体。 地下鉄について。 地下鉄の落とし物。 シェルターとして利用された地下鉄ホームについて。 これ、光る。 ロンドン地下鉄の決まり文句'Mind the Gap'「(ホームと車両の)隙間にご注意」にひっかけた展覧会'Mind the Map'「地図にご注意」。 ロンドン地下鉄マップを利用したロンドン市民にはおなじみのアート作品、'The Great Bear'。 路線図の

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  • NHKのレディ・ガガの字幕翻訳は隠蔽の意図とか以前の問題かな? - Commentarius Saevus

    2012年紅白歌合戦に出場したレディ・ガガの"Born this way"の翻訳がおかしいということで酷評されている。エントリはこの件について、なんで字幕があんなこと(NHKによる自己検閲が疑われるような内容)になったのか私の推測(あくまでも推測)を書いたものである。 NHK紅白・レディー・ガガの歌詞字幕について YouTubeに無許可アップロードされていた動画が消されてしまったので(海外在住者には無許可アップロードが唯一NHKにアクセスする手段なのだが)、上のブログから歌詞の写しを引用するほかないため、一応上のトランスクリプトが正しいものとして引用する。まだYouTubeに動画があった時点で私が見た限りでは全体的に翻訳がヘンだったのだが、一番問題視されているのは下にあげる箇所で、NHKでは以下のように翻訳されていたらしい。 Whether you're broke or evergre

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  • 英雄詩が始まる前には何があったか?ビートルズを作る前のジョン・レノンの伝記映画『ノーウェア・ボーイ』 - Commentarius Saevus

    プリンス・チャールズ・シネマで、ジョン・レノンの少年時代を描いた映画『ノーウェア・ボーイ』(Nowhere Boy)を見てきた。基的な筋としては、ジョンの実母でセクシーで派手なワーキングクラスの女性ジュリアと、その姉でジョンの養母であり、ロウワーミドルクラスの堅実な暮らしを営むミミおばさんがジョンの「母の地位」をめぐって戦いを繰り広げ、それが若いジョンにどういう影響を与えていたかという話である。 全体的には非常に緊張感のある映画で、アーティストであるサム・テイラー=ウッドのデビュー作らしいのだが、初監督作にしては全然OKな出来だと思う。とにかく役者がみんな頑張っており、ジョン・レノン役のアーロン・ジョンソンは、50年代風の黒縁メガネがよく似合うリヴァプールの垢抜けない田舎のにいちゃんといった雰囲気を実によく醸し出していた(ナショナルポートレイトギャラリーの60年代音楽の写真展で見たのだが

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