第30話 最後の斎王の母をめぐる不思議な話 阿野廉子(あのれんし)【1301から1359】という女性がいます。後醍醐天皇の妃の一人で、新侍賢門院(しんたいけんもんいん)の号を受けた女院です。後村上天皇の母でもあるので、国母となりました。ただし南朝方の。 そして、最後の斎王・祥子(さちこ)内親王の母でもあります。 彼女は結婚して以来、ずっと後醍醐天皇の傍らにいた人でした。もともと皇太子時代の妃・西園寺嬉子(さいおんじきし)に付いてきた女房だったのですが、後醍醐の寵愛を受けるようになり、男三人女二人の子供をもうけました。その寵愛ぶりから、建武の新政を崩壊させた悪女とも言われるのですが、後醍醐の行く所、隠岐島から吉野の山奥まで同行し、息子の一人を後村上天皇として即位させたのですから、その行動力たるや驚くべきものといえるでしょう。 その第一皇女が祥子内親王です。祥子は斎王になったものの、建武政権