韓国の「自虐史観」 ○『神奈川大学評論』第52号、2005年12月 国境を越える「自虐史観批判」―東アジアにおける「過去」との向き合い方 藤井たけし 「自虐史観批判」なるものが日本で登場してからもう一〇年にもなろうとしている。「新しい歴史教科書をつくる会」による中学歴史教科書の今年度採択率が〇・四%にも満たなかったことからもわかるように依然として彼/女らの試みが代案として成功しているとは言い難い状況にあるものの、 彼/女らが「自虐史観」と呼ぶ、日本国に対して批判的な歴史叙述は確かにこの間消耗戦を強いられている。そしてその影響は歴史叙述という狭い分野に限られた話ではない。ベトナム反戦運動や東アジア反日武装戦線による問題提起などを契機として多様な次元で試みられてきた、国家を経由しない連帯への想像力は今や社会全般にわたって枯渇させられつつある。その結果現れているのが「勝ち組」だの「負け組」だの