目次 はじめに 1.「慰安婦」問題の初歩的誤解 2.だれが文書史料至上主義か 3.「慰安婦」制度は公娼制か 4.国際法違反を問うことは強者の論理への屈服か はじめに 「新しい歴史教科書をつくる会」に属する人たちと私たちとの聞の「従軍慰安婦」問題に関する論争の評価については、これまで、どっちもどっちだ式の、両者をともに非難する言説が少なくなく、いささかうんざりしていた。 しかし、「記憶の政治学」により上野千鶴子氏が論争に参加したときは、これとは異なり、私たちの側に立って、しかも、たとえば私のいたらなさを批判しながら、加わってくださったと思い、「日本の戦争責任資料センター」主催のシンポジウムでは、それを「歓迎」したのだった。 しかしながら、その後、上野氏の「ポスト冷戦と『日本版歴史修正主義』」を読むなかで、そんな単純な問題ではないと思い知らされることになった。 このなかでは、上野氏はつぎのよう