分厚く重い書籍であるため持ち歩くことはできず、ずっと敬遠していましたが、読み始めてみると、驚くほど読みやすい文章で、実質2日で読了してしまいました。2013年頃に図書館で言語論的転回、特に野家啓一氏との論争の部分だけ読んだ時、小難しい議論で時間のかかる本だとの印象を持ってしまいました。今年春も、『歴史・文化・表象――アナール派と歴史人類学』(1992年)掲載の二宮宏之氏と柴田三千雄氏との対談※で、遅塚氏は、特に因果論にこだわってたため、(アナール派の社会史の人だとは思っていましたが)、基本的に、歴史学が「科学」であることに歴史学の史実性・客観性の根拠の権威を求めるタイプではないか、との先入観ができてしまっていたためです。 ※『歴史・文化・表象――アナール派と歴史人類学』(岩波書店、1992年)の出版は1992年だが、収録論文は70-80年代に『思想』に掲載されたものが多い。巻末の対談は、『