野崎昭弘『逆説論理学』 名和小太郎『サイバースペースの著作権 知的財産は守れるのか』 北岡正三郎『物語 食の文化 美味い話、味な知識』 母は中学の数学教師で家には数学関連の新書が並んでいた。無味乾燥な数学書には全く読む気をそそられなかったが、『逆説論理学』だけは別格だった。「世界最小の電子計算機」や「無限の部屋を持つホテル」といった反常識的コンセプトとその論証は、屁理屈をこねては叱られていた小学五年生を魅了し、論理の力で堅牢な世界をぐにゃぐにゃと作り変えることの愉悦を教えてくれた。今のふざけた私があるのはこの本のおかげである。今年新装版で出た同じ著者の『詭弁論理学』も面白いが、こちらの方が個人的には印象深い。 ちょこちょこと著作権の勉強をしていた大学院生の頃に出会った『サイバースペースの著作権』は、説教くさいそれまでの著作権書と一線を画した異彩を放っていた。エンジニア出身の法学者である著者