日本で広まったのはこの10年 「哲学対話の授業」と聞くと、何か難しい実践をイメージするかもしれないが、哲学史や哲学者の思想を教え込んだり話し合ったりする教育ではない。「生きるとは何か、自由とは何かといった素朴な問題や身近な問いについて、みんなで意見を出し合って考えを深めていく実践です」と、開智国際大学教育学部准教授の土屋陽介氏は説明する。 近年日本でも道徳の時間を中心に導入する学校が増えたが、その発祥は1960年代末にさかのぼる。米国の哲学者、マシュー・リップマンが独自の哲学教材を作り、公立小学校で対話型授業を行ったことが始まりといわれる。 その実践は一躍注目を浴び、70年代末までに米国内の約5000もの教室で行われるようになったという。リップマンが自身の教育活動を「Philosophy for Children」、通称「P4C」と名付けたことからこの呼び名で普及し、世界の50以上の国や地