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ブックマーク / realsound.jp (17)

  • 『鬼滅の刃』鬼舞辻無惨はジャンプ史に残るボスキャラだ DIO、カーズ、シックスに連なる“悪の系譜”を読む

    鬼滅の刃』鬼舞辻無惨はジャンプ史に残るボスキャラだ DIO、カーズ、シックスに連なる“悪の系譜”を読む 悪鬼殺し(Demon Slayer)の物語 人類史上、最大のキャラクターが「キリスト」だとすれば、それに続くナンバー2のキャラクターは「悪魔」である……。漫画原作者、小池一夫はそんなことを語っている。(『大阪芸術大学 大学漫画』vol.1「小池一夫の誌上キャラクター原論」第1回)敵対者が邪悪で強大であるほど、それに打ち勝つヒーローの存在は輝くだろう。だから物語のヒーロー(主人公)は、個性的で、強く記憶に残る「ボスキャラ」を必要とする。 『鬼滅の刃』という物語も例外ではない。「鬼舞辻無惨」というボスキャラは、ジャンプ史に残るレベルの魅力で読者を惹き付け……、主人公たちからの「敵意」を徹底して引き寄せている。また、こうも言えるだろう。私たちは、「勧善懲悪」「正義の味方」といった言葉を聞くと

    『鬼滅の刃』鬼舞辻無惨はジャンプ史に残るボスキャラだ DIO、カーズ、シックスに連なる“悪の系譜”を読む
  • 細田守と新海誠は、“国民的作家”として対照的な方向へ 2010年代のアニメ映画を振り返る評論家座談会【前編】

    細田守と新海誠は、“国民的作家”として対照的な方向へ 2010年代のアニメ映画を振り返る評論家座談会【前編】 年が明け2020年に突入。同時に2010年代という時代も終わりを迎えた。リアルサウンド映画部では、この10年間のアニメーション映画を振り返るために、レギュラー執筆陣より、アニメ評論家の藤津亮太氏、映画ライターの杉穂高氏、批評家・跡見学園女子大学文学部専任講師の渡邉大輔氏を迎えて、座談会を開催。 前編では、細田守や新海誠など、今や国民的作家となったアニメーション監督に注目。なお、後日公開予定の後編では、「ポスト宮崎駿」をめぐる議論の変容や女性作家の躍進、SNSとアニメーションの関係性について語り合っている。(編集部) 最初の地殻変動は2012年 ーー2014年に『アナと雪の女王』と2016年に『君の名は。』と、2010年代に入ってから、興行収入が200億を超える作品が出てくるように

    細田守と新海誠は、“国民的作家”として対照的な方向へ 2010年代のアニメ映画を振り返る評論家座談会【前編】
  • 『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』は、追加シーンによって何が変わったのか

    こうの史代の同名漫画を原作に、2016年に日で予想外の大ヒットを記録し、異例のロングランを達成したアニメーション映画『この世界の片隅に』。多方面より多くの賛辞が送られている作品だが、そこに“さらにいくつもの”シーンを製作し、編に追加したのが、新たに劇場公開された、『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』である。 もともと、日の劇場アニメーションとしては、129分という長めの上映時間だったオリジナル版だが、作は加わったシーンによって、168分と、3時間に迫る大長編作品となった。 ここでは、加えられたシーンによって何が変わったのか、その考察にくわえ、この機会にもう一度作全体を総括し直してみたいと思う。 『この世界の片隅に』は、日戦争に突き進み敗戦を迎えるまでの昭和の時代を背景に、広島から呉へと嫁いだ、絵を描くことが大好きな“すずさん”を主人公に、戦争のなかの日常と、戦争によってあ

    『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』は、追加シーンによって何が変わったのか
  • 『きみと、波にのれたら』不完全な者たちの等身大の姿 湯浅政明監督作にある“対比構造”を紐解く

    湯浅政明が監督を務めた『きみと、波にのれたら』が6月21日より公開された。前作の『夜明け告げるルーのうた』で世界でも有数の国際アニメーション映画祭であるアヌシー国際映画祭にてグランプリにあたるクリスタル賞に選ばれるなど、国際的に注目を集める日を代表するアニメ監督の1人である。 そんな湯浅監督作品の特徴といえばドラッグ作画とも称される独特な線や絵の動きに注目が集まるだろう。作でも水が重要な役割を果たしており変幻自在な動きによってアニメならではの快感を発揮している。湯浅監督作品を語る際はアニメ特有の動きについて言及する方が多い印象を受けるが、今回は物語の特徴から作ではどのような作家性が発揮されているか考えていきたい。 湯浅作品の大きな特徴の1つが“不完全な主人公や登場人物への愛”と言えるのではないだろうか? 湯浅の名前を一躍世界中に知らしめ、今でも多くのクリエイターから絶賛されている『マ

    『きみと、波にのれたら』不完全な者たちの等身大の姿 湯浅政明監督作にある“対比構造”を紐解く
  • 芦田愛菜が担うナビゲーターの重要性 観客を未知の世界へと誘う『海獣の子供』の挑戦

    夏休みに向けて公開されるアニメーション映画は、その年を代表するような勝負作が並びます。かつてはスタジオジブリをはじめとして、興行収入100億円越えを狙ってくるような作品が集まっていました。今年は偶然かもしれませんが“水”を題材にした魅力的な作品が並びました。夏を意識したのか、『天気の子』も予告編で雨が印象的に使われていますし、『きみと、波にのれたら』も海を舞台にした作品です。アニメーションで様々な水の表現を見比べることができることになりました。 そういった視点で観ると、『海獣の子供』の水の表現は、海や水そのものをリアルに描写するのではなく、描き手の心を通して表現されているなと感じました。それがとてもSTUDIO 4℃らしいと言いますか、代表作『鉄コン筋クリート』のように、独特のアングルで魅せてくれます。松大洋さんや五十嵐大介さんの漫画の止まった絵だからこそ成立している美しいものを、動いて

    芦田愛菜が担うナビゲーターの重要性 観客を未知の世界へと誘う『海獣の子供』の挑戦
  • 『プロメア』は大衆娯楽映画の最先端に 強烈な生のエネルギーを描くTRIGGERの手法とは

    『プロメア』は大衆娯楽の最先端だ 歌舞伎役者の市川染五郎は、中島かずきの戯曲『阿修羅城の瞳』の公演に参加した際、劇団☆新感線の舞台について、現代の歌舞伎であると評している。 「見得を切るとか、花道を使うとか、着物を着るとか、そういう上っ面の歌舞伎の真似事ではなくて、歌舞伎が来持っている娯楽性とか大衆性が新感線の舞台にはあると感じたんです」(『「阿修羅城の瞳」K.NAKASHIMA SelectionVol.2』論創社、P187) TRIGGERの作る作品にも同じことが言えるのではないか。主人公、ガロの見得きりの動作などは直接歌舞伎からの引用だが、それ以上に、市川染五郎の言う「歌舞伎が来持っている娯楽性と大衆性」がこの作品には溢れている。『プロメア』はアニメにしかできないやり方で、大衆娯楽の最先端を示した作品だ。ぜひとも劇場に行って、その熱量にノックアウトされてきてほしい。 ■杉穂高

    『プロメア』は大衆娯楽映画の最先端に 強烈な生のエネルギーを描くTRIGGERの手法とは
    deadwoodman
    deadwoodman 2019/07/12
    “市川染五郎は、中島かずきの戯曲『阿修羅城の瞳』の公演に参加した際、劇団☆新感線の舞台について、現代の歌舞伎であると評している…歌舞伎が本来持っている娯楽性とか大衆性が新感線の舞台にはあると感じた”
  • 『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』なぜ圧倒的な美しさを獲得できた? 作品のメッセージを考察

    青白く輝く光の柱が暗雲を貫き、雷撃が中空を駆け抜ける。哀れで無力な人間たちは、巨大な生物たちの強大な力のぶつかり合いに吹き飛ばされ、蹂躙されていく。そんな地獄のような世界が、おそろしく荘厳に、美しく描かれていく。かつて、これほどまでの恍惚を味わえる“怪獣映画”があっただろうか。 今回のハリウッド(レジェンダリー・ピクチャーズ)版ゴジラ第2作は、メインとなるゴジラ以外に、日でおなじみの怪獣たちであるキングギドラ、モスラ、ラドンらが登場し、熾烈なバトルを繰り広げる一大巨編となった。内容は、東宝映画『三大怪獣 地球最大の決戦』(1964年)を彷彿とさせるが、その題名は、東宝第1作『ゴジラ』(1954年)がアメリカ向けに編集された、“Godzilla, King of the Monsters!『怪獣王ゴジラ』(1956年)”と同じく、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』となった。 言うまでも

    『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』なぜ圧倒的な美しさを獲得できた? 作品のメッセージを考察
    deadwoodman
    deadwoodman 2019/07/07
    “ウィリアム・ターナーの筆致のような繊細な感覚で描かれ、そして同時に“最後の審判”が描かれた宗教画のように、荘厳な終末感に満ちている。…怪獣たちの殺し合いを神話の世界の戦いとしても捉えているのだ”
  • 『ゴジラ』をクリエイター発掘企画に“捧げた”理由は? 東宝×ALPHABOATのキーマンを直撃

    「東宝が、あなたにゴジラを捧げます」 これは、東宝株式会社とALPHABOAT合同会社が共同運営する、YouTube及びSNSを活用したオーディションプロジェクト「GEMSTONE」の第一弾募集に際して公開された動画のキャッチコピーである。 様々な才能を持った原石(GEMSTONE)を発掘し、東宝とALPHABOATが育成環境と活躍の場を与えるこのプロジェクトの第一弾のテーマは、東宝の看板作品である『ゴジラ』だ。ゴジラにインスパイアされた作品であれば、実写・アニメ・音楽イラストなど、ジャンル不問で応募できる。 東宝にとってゴジラというIP(知的財産)は何より重要なものだ。その重要IPを「捧げる」とはどういうことなのか。東宝という映画業界最大手の事業者がこうした形で新たな才能を発掘しようとするのはなぜなのだろうか。 企画のカギを握る三人、東宝株式会社取締役でチーフ・ゴジラ・オフィサー(C

    『ゴジラ』をクリエイター発掘企画に“捧げた”理由は? 東宝×ALPHABOATのキーマンを直撃
  • 『アニゴジ』は“ゴジラ作品”としてどうだったのか? 3作かけて向き合った壮大なテーマ

    4年の歳月をかけ制作されてきた、アニメーションによって表現されたゴジラの劇場用作品、通称『アニゴジ』3部作も、今回の『GODZILLA 星を喰う者』 で、ついに最終章を迎えた。 第1作『GODZILLA 怪獣惑星』では人類の苦難の日々と圧倒的な力を持つゴジラの驚異、第2作『GODZILLA 決戦機動増殖都市』ではその力に対抗できるメカゴジラの活躍と、そこから生まれる新たな問題が描かれた。そしてこの第3作『GODZILLA 星を喰う者』 は、ついにゴジラシリーズのなかでも人気と戦闘能力ともに最高クラスの怪獣「ギドラ(キングギドラ)」がゴジラに襲いかかる。 前2作では秘密のベールに隠されてきたいくつもの疑問が、この最終作によって明らかになることで、シリーズは、ついに全体を通してしっかりとした評価が可能になった。ここでは第3作を中心に、シリーズがゴジラ作品としてどうだったのか、そして何を描い

    『アニゴジ』は“ゴジラ作品”としてどうだったのか? 3作かけて向き合った壮大なテーマ
  • 新たな「意味」を与えられた怪獣たち|Real Sound|リアルサウンド 映画部

    新たな「意味」を与えられた怪獣たち ゴジラとはどういう存在なのかという問いかけも、ここでは比較的直接的に語られていく。シリーズのゴジラは、2万年の歳月をかけ地球の環境と同一化しており、それはすでに「ゴジラ・アース」なる、地球そのものといえる存在にまでなっていた。第1作の時点では、環境を破壊してきた人類への痛烈な「しっぺ返し」が、ゴジラ・アースという自然と一体になったゴジラによって強調されている。 第2作『決戦機動増殖都市』では、さらに複雑な設定の「メカゴジラ」が登場する。ここでのメカゴジラは、意志を持って周囲の物体を吸収しながら成長し続ける、金属生命体のかたちづくる都市「メカゴジラシティ」として描かれる。人類に協力してきた異星人種「ビルサルド」たちは、自ら金属に吸収され、人としての肉体を放棄してメカゴジラシティと同一の存在になることでゴジラを凌駕しようとする。 「ゴジラ・アース」、「メカ

    新たな「意味」を与えられた怪獣たち|Real Sound|リアルサウンド 映画部
  • 人間の哀しい運命と、遺された希望|Real Sound|リアルサウンド 映画部

    人間の哀しい運命と、遺された希望 神官メトフィエスらエクシフたちは、人類を供物として儀式に利用するため、ゴジラの脅威にさらされ無力感にさいなまれた者たちを、自分たちの信仰する宗教によって導こうとする。その教義とは、力を持たない自分たちが物連鎖の下位にある状況を受け入れ、生物の格差を肯定して強者の意志に従うことで、ささやかな連帯の高揚を味わい一時の恍惚感を得ようという、犠牲的でいじましいものである。面白いのは、このカルト的な宗教の蔓延が、疲弊した現在の日アメリカの社会状況を戯画化しているように感じられるということだ。 ゴジラとギドラの戦闘は、メトフィエスが見出したハルオ・サカキの内面で「絶望状況のなかで人類はどう生きていくか」という、精神世界の葛藤の末に決着がつく。そして物語は、賛否を呼びそうな衝撃的なラストを迎えることになる。 ハルオの最後の決断が示すのも、やはりあらかじめ決められた

    人間の哀しい運命と、遺された希望|Real Sound|リアルサウンド 映画部
  • 『ハン・ソロ』なぜ賛否渦巻く結果に? 良い面と悪い面から考える、その魅力と問題点

    シリーズのプロデューサーは、インタビューのなかで、監督の交代はその資質にあったということを述べている。だが、そもそも監督を選んだのはプロデューサー自身であるはずだし、失敗したくないのであれば、製作中も綿密に打ち合わせを行い、内容のチェックをしなければならないはずだ。製作が佳境に入った段階でなければ、その出来を判断できないというのは不思議だ。経営陣など、上層部の鶴の一声によって全てが決められているのではないかという気もしてくる。問題なのは、監督交代や撮り直しを、結局のところ誰が判断しているのか判然としないところであり、その人物たちは、作品を正当に評価できる能力が備わっているのかすら、よく分からないというところだ。 そうなってくると、果たして『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』の撮り直しや、『エピソード9』や作における監督交代すらも、正しい判断だったのか怪しくなってくる。ギャレス・

    『ハン・ソロ』なぜ賛否渦巻く結果に? 良い面と悪い面から考える、その魅力と問題点
  • 『ハン・ソロ』なぜ賛否渦巻く結果に? 良い面と悪い面から考える、その魅力と問題点

    エピソード7は、『スター・ウォーズ』旧三部作ファンのための作風であり、エピソード8は、それを打ち破ろうとする変革的な意志を感じるものだった。それらは対称的な意味を持ちながらも、ファン目線の感覚をベースとしているという意味では、いずれも同質の作品といってよい。ロン・ハワード監督は、おそらくそのようなファン心理を持ち合わせていないため、作中でファンを喜ばせるような描写をしたとしても、あくまでそれらは作家性とは関わりなく、観客へのサービスとして提供しているに過ぎない。その姿勢はファンから距離をとりつつ、その代わりもっと広い観客に対応していると感じられる。そしてそれは、来『スター・ウォーズ』が持っていた骨太さではないだろうか。 その一方で、作はあまりにドライ過ぎると感じるところも多い。ここで熱をもって描かれるのは、あくまで「西部劇」の要素であり、ある女性とのほろ苦い関係を通し世間を学ぶことで、

    『ハン・ソロ』なぜ賛否渦巻く結果に? 良い面と悪い面から考える、その魅力と問題点
  • 『ハン・ソロ』なぜ賛否渦巻く結果に? 良い面と悪い面から考える、その魅力と問題点

    相棒の“チューバッカ”とともに「銀河一」と豪語する高速の宇宙船「ミレニアム・ファルコン」を駆り、レーザー光線を発射する銃「ブラスター」を巧みに操って、ならず者や帝国軍と渡り合う“運び屋”。皮肉屋だが情に厚い、ハンサムなアウトロー。ハリソン・フォード演じる“ハン・ソロ”は、『スター・ウォーズ』旧三部作で最も愛されているキャラクターの一人だ。そんなハン・ソロを主人公にして、彼がルーク・スカイウォーカーに出会う前の、若かりし頃の物語を描くのが、『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』である。 ディズニーによる、この『スター・ウォーズ』のスピンオフ企画第2作は、アメリカでは興行収入の面で芳しい成績を収められなかった。『スター・ウォーズ』の権利を取得して以降、爆発的なヒットの連続でビジネスを継続していきたいと考えていたディズニーの経営陣にとっては、苦々しい結果となっている。その一方で、一部では作

    『ハン・ソロ』なぜ賛否渦巻く結果に? 良い面と悪い面から考える、その魅力と問題点
  • 『シン・ゴジラ』脚本から見えた“もう一つの物語” 『ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ』徹底考察

    第90回『キネマ旬報』ベストテンが1月10日に発表された。2016年の日映画ベストワンには『この世界の片隅に』(16年)が選出され、監督賞には同作を監督した片渕須直が選ばれた。ベスト2位に選出された『シン・ゴジラ』(16年)の庵野秀明監督は脚賞を受賞。片淵監督は『魔女の宅急便』(89年)で演出補を務め、庵野監督は『風の谷のナウシカ』(84年)の原画担当からプロとしてのキャリアをスタートさせたことで知られているが、奇しくも宮﨑駿と縁深い監督たちが、監督賞・脚賞を受賞したことになる。 さて、脚賞を受賞した『シン・ゴジラ』だが、昨年末に発売された製作資料集『ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ』(株式会社カラー)に脚が収録されたことで、活字で目にすることができるようになった。しかも、この大冊には関連の図版、関係者インタビューはもとより、複数の初期プロットから、準備稿、決定稿、完成した映画から

    『シン・ゴジラ』脚本から見えた“もう一つの物語” 『ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ』徹底考察
  • 日本のアニメーションはキャズムを越え始めた 『君の名は。』『この世界の片隅に』から考察

    宮崎駿監督の長編引退宣言、そしてスタジオジブリ製作部門の休業によって、国民的なヒットメイカー不在の危惧がささやかれていた、日の劇場アニメーション。2016年から2017年にかけ、思いもよらないところから奇跡的な大ヒットを達成する作品が生まれた。 ひとつは『君の名は。』である。若い世代の観客を中心に一大ムーヴメントを起こし、急速に映画館が増え続けている中国などで、日映画興行収入の新記録を打ち立て、世界の興行収入の累計で宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』を抜き、日映画最大のヒット作とまでなった。 もうひとつは、『この世界の片隅に』だ。全国63館という公開規模から、熱狂的支持を得て口コミ、SNSなどによって公開館数を増やし、累計で200館以上にまで達するという偉業を達成、観客数はついに100万人を突破した。興行収入は10億円を突破、300億超えの『君の名は。』の規模とは比べにくいが、当初の状

    日本のアニメーションはキャズムを越え始めた 『君の名は。』『この世界の片隅に』から考察
  • 初代ゴジラの“呪縛”から逃れた『シン・ゴジラ』 モルモット吉田が評する実写監督としての庵野秀明

    公開3週目を迎えても『シン・ゴジラ』の勢いは依然、衰えを見せない。IMAX、MX4D、通常上映と、毎回環境を変えて観ていたが、この原稿を理由にまた劇場に足を向けてしまった。高圧縮の情報量、現実の反映、オマージュ、トリヴィア、語られないまま終わった謎への解釈など、まるで20年前の『新世紀エヴァンゲリオン』テレビシリーズ放送終了後から翌年の劇場版公開にかけての熱狂が再現されているようだ−−と言っては言いすぎだろうか。いずれにせよ、繰り返し観ることで細部を語る魅力が増す作品であることは間違いあるまい。 マイナスをプラスにさせる庵野秀明のアレンジ ここでは、〈庵野秀明にとってのゴジラ〉から話を始めてみたい。というのも、特撮好きなエヴァの監督というイメージから誤解されがちだが、これまで庵野はウルトラマンほどの熱狂をゴジラには見せていなかったからだ。『シン・ゴジラ』の原点となる第1作の『ゴジラ』(54

    初代ゴジラの“呪縛”から逃れた『シン・ゴジラ』 モルモット吉田が評する実写監督としての庵野秀明
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