山崎光夫 家庭や教育現場で「食育」が浸透している。食べることの見直しが始まっている。 「食育」は、「知育」「体育」「徳育」「才育」とならんだ「五育」のひとつである。 この「食育」という言葉を日本で最初に使いはじめたのは、福井県出身で陸軍薬剤監だった石塚左玄(さげん)(1851〜1909)である。四十五歳で『化学的食養長寿論』を著し、地方に先祖代々伝わってきた伝統的食生活には意味があり、その土地に行ったらその土地の食生活に学ぶべきであるという“身土不二(しんどふじ)”の原理を発表した。さらに、食の栄養、安全、選び方、組み合わせ方の知識とそれにもとづく食生活が心身ともに健全な人間をつくるという教育、すなわち「食育」の重要性を説いている。 このたびの「食育基本法」は、“石塚左玄法”ではないかと思えるほど、石塚の発想と原理を取り入れている。 石塚は地産地消の精神を真っ先に唱え、重