大型放射光施設SPring-8の構造生物学 I ビームラインBL41XUを用いて、心不全の治療薬ジギタリスの標的分子でもあり、神経の興奮などに必須なナトリウム・カリウムポンプの立体構造を世界で初めて解明することに成功した。 すべての動物細胞では細胞の内と外でナトリウム(Na+)、カリウム(K+)、カルシウム(Ca2+)等のイオンに関し濃度差が保たれており、この濃度差が生命活動の原動力ともなっている。例えば、「神経が興奮する」という現象は、細胞の外に多いNa+が、濃度差に従って細胞内に流入することで「活動電位」という電気信号が生じることがその実体である。一方、興奮によって失われたイオンの濃度差をもとに戻すのがイオンポンプ蛋白質の働きである。 今回発表する研究で構造が決定されたのはNa+, K+に対するポンプ蛋白質であり、ATPのエネルギーを利用してNa+を細胞内から外へ、K+を外から内へと運