どうしても現実から逃げてしまう「回避性」の人たちはどう生きてきたか。精神科医の岡田尊司さんは「作家や詩人など、誰もが知る成功者の中に回避性の傾向をもった人が少なくない」という――。 ※本稿は、岡田尊司『生きるのが面倒くさい人 回避性パーソナリティ障害』(朝日新書)の一部を再編集したものです。 期待されると逃げてしまう哲学者 『大衆運動』や『波止場日記』などで知られる社会哲学者のエリック・ホッファーは、生きるのが面倒くさいという状態に中年期まで悩まされた人だった。 自伝によれば、彼は心因性と思われる失明で、七歳から十五歳まで目が見えなかったので、ほとんど学校にも通ったことがなく、アルバイトや力仕事を転々としながら、読書と独学で知識を身に付けた。その才能や人となりに惹かれて、エリックを評価し、表舞台に引き上げようとする人は何人もいたが、そうした期待がかけられるたびに、彼は文字通り姿をくらまして