新左翼運動から撤退した著者がフランスにいって書き溜めた。それがこの本のもと。出版するところはなかったが、いくつかの奇縁が重なってエンターテイメント作家として小説を発表するようになり、あわせてこの本も雑誌連載ののち加筆訂正されて1984年に出版された。のちに、さらに加筆されて2010年代に再販されたが、ここで読んだのは最近の加筆は入っていないちくま学芸文庫版。主題は、左翼運動がテロリズムに傾斜していく理由について。 序章 観念の廃墟 ・・・ 近代の革命(フランスからカンボジアまで)の革命政権が抑圧体制、テロリズム国家に変貌する理由を検討する。それは理論からの転倒ではなくて、理論に内在する観念の必然である。それを検討することが連合赤軍事件からカンボジア虐殺までの左翼の「退廃」を乗り越える契機となる。この国のテロリズム批判は埴谷雄高「幻視のなかの政治」、高橋和巳「内ゲバの論理はこえられるか」)