昨日の記事で詳しく取り扱ったが、加藤周一が1955年に著した「信州の旅から---英語の義務教育化に対する疑問---」は、大きな反響を呼んだ。学者や知識人は雑誌や新聞に反対の弁を寄せ、自説を展開する媒体を持たない一般の人々は、投書や加藤へ手紙を送るなどして、「英語義務教育化」廃止に対する賛否を表明した。ただし、加藤の立論は、正確に理解されなかった場合も多かったようである。過去の英語教育論争ではよく見られることだが、「必修化」への反対論は、しばしば英語教育「全廃」論であるかのように誤解されてしまう場合があった。加藤の場合も例外ではなかったようで、加藤もその点への不満を口にしている*1。 さて、この反響、とりわけ批判に応えるかたちで発表されたのが、翌年1956年の『世界』2月号に発表された「再び英語教育について」である。この論文では、寄せられた批判を紹介し、それに逐一批判を加えていく、という体裁