昨年の図書館総合展で、初めて台湾の次世代型ライブラリーが紹介された。国内志向の強い日本の図書館業界に刺激となりそうだ。 2015年11月パシフィコ横浜で開かれた第17回図書館総合展で、初めて台湾の次世代型ライブラリーが紹介され大きな注目を集めた。この展示会には毎年日本の図書館関係者が全国から詰め掛けるが、台湾の首都台北に隣接する新北市政府(英語名:New Taipei City、旧台北県)の林寬裕文化局長が「台湾にみる次世代型図書館~知的情報交流空間のデザインと演出を検証」と題された分科会(主催:図書館流通センター)に招かれ、「24時間365日開館」を初めて実現した先進的な新中央図書館(唐連成館長)の概要について説明した。 会場に詰め掛けた156人の出席者の間からは「まさに理想の図書館だ」「実に魅力的な図書館だ」「日本が見習うべき要素がいっぱいある」と感嘆の声が上がった。日本で発行されてい
CA1853 – 神戸大学附属図書館「震災文庫」利用の現状と課題 / 井庭朗子, 小村愛美, 花﨑佳代子 国立図書館によるデジタル化資料の専門家育成:LCとBLの事例から 国際子ども図書館資料情報課:東川梓(ひがしがわ あづさ) 1. はじめに 海外の国立図書館では館外の研究者や図書館員の専門性を育成する活動の一環として、フェローシップと呼ばれる研究奨励制度やレジデンシー・プログラムと呼ばれる一定期間滞在しながら研究を行うプログラムが実施されている(1)(2)。特にデジタル化資料に携わる研究員や図書館員の専門性を高めるために、米国議会図書館(LC)ではNational Digital Stewardship Residency (NDSR)(3)、英国図書館(BL)でもBLラボ(British Library Labs)(4)などが近年始まった。資料のデジタル化に関する技術や人材は確立さ
米国図書館協会(ALA),図書館のための政策課題を発表 2015年6月26日,米国図書館協会(ALA)は米国内のあらゆる図書館のための政策課題“National Policy Agenda for Libraries”(以下政策課題)を公表した。これは,ALAの情報技術政策局(OTIP)の“Policy Revolution!”イニシアチブに携わる図書館組織とともに,公共図書館や大学,財団など様々な組織からのメンバーで構成された委員会が,パブリックコメントの結果や米国の政治・経済情勢等も考慮しつつ,米国の図書館経営者などのためにまとめたものである。 1.図書館の機能 図書館の機能は資料の提供などに限定されず,コンピュータ実習室や職業センターといった図書館以外のインフラとしての機能も果たすものであり,図書館を有効活用すれば,新たなインフラを整備するより経済的かつ運営面でも効率的であり,地域
司書を配置しない大学図書館カウンターの事例<文献紹介> Timothy Peters. Taking librarians off the desk: one library changesits reference desk staffing model. Performance Measurement and Metrics. 2015, 16(1), p. 18-27. 米国ミシガン州の,約2万7,000名の学生が在籍するセントラル・ミシガン大学(以下CMU)図書館で,2013年度にカウンターの人員配置が変更された。変更後の人員配置は「司書待機型配置モデル」(以下新モデル)と呼ばれ,司書はレファレンスカウンター(以下カウンター)に常駐せず,学生スタッフや准専門職では回答できないレファレンスに関してのみ,対応するというものである。CMU図書館の職員数は約70名で,レファレンス部門には,
ORCID導入のコストと利点とは?英国の試行プロジェクト 英国のJisc(英国情報システム合同委員会)と研究マネジメント専門職ネットワーク(Association of Research Managers and Administrators:ARMA)は,2014年5月から2015年1月にかけて8つの高等教育機関で行われていたORCID(CA1740参照)の試行プロジェクトについてのレポート“Institutional ORCID Implementation and Cost-Benefit Analysis Report”(以下レポート)を公開した。ORCIDとは,世界中の研究者に一意な識別子を与えることを目指す試みであり,ORCID識別子を導入することで,著者等の名前の曖昧性を解決するだけでなく,研究プロファイルのメンテナンス,助成金申請,論文投稿,論文など,研究者と研究を関連づけ
アラブ諸国の機関リポジトリの評価<文献紹介> Scott Carlson. An Assessment of Institutional Repositories in the Arab World. D-Lib Magazine, 2015, 21(5/6) アラビア語圏であるアラブ諸国の機関リポジトリは,「未熟な段階」(infancy stage)にあるといわれる。それは,この地域特有のトピックに関する文献があまり公表されてないこと,アラブ諸国の研究者の多くが機関リポジトリについての知識や経験をあまりもってないこと,長期保存の方針がないこと,などが要因である。本文献は,このようなアラブ諸国の機関リポジトリを,外部利用者の視点からアクセシビリティや透明性などの点で評価する。評価対象は,11か国の25のリポジトリである。 ◯評価基準 評価基準は,リポジトリの透明性に焦点を当てた北米の研究図
図書館における青少年へのメディア指導:ALSC白書から 米国図書館協会(ALA)の児童サービス部会(Association for Library Service to Children:ALSC)が2015年5月8日に発表した白書“Media Mentorship in Libraries Serving Youth”(以下白書)では,図書館における青少年及びその家族のためのメディア指導に関してまとめられている。白書は,(1)先行する調査,文献等の総括,(2)図書館員が青少年をはじめとした,地域社会の人々のメディアリテラシーを養う「メディア指導者」(media mentor)として果たすべき責務及び図書館等がメディア指導者養成のために採るべき方策についてのALSCの立場,という2点で構成されている。また,ALSCのウェブサイト上では,2014年8月に,ALSCなどが実施した,(1)図書館
仏・独における電子版博士論文のOAに関する調査<文献紹介> Joachim Schopfel et al. A French-German Survey of Electronic Theses and Dissertations: Access and Restrictions. D-Lib Magazine, 2015, 21(3/4) 2013年と2014年に,フランスのGERiiCo研究室(リール第3大学)と,ドイツの科学的ネットワーク機関(オルデンバーグ大学)が共同研究プロジェクト“Electronic Theses and Dissertations: Access and Restrictions”(以下EDAR)を開始した。EDARによる調査では,(1)電子版博士論文“electronic PhD theses and dissertations”(以下ETDs)のオープン
古音源の保存と活用に関する国際シンポジウム<報告> 明治期に録音された雅楽より,現在演奏されている雅楽はテンポが緩やかなものであるという。当時の録音メディアの収録時間の限界が一因であるとしても,どうやら明治期には,今よりも速いテンポで雅楽が演奏されていたらしい。 そんな仮説を神戸大学の寺内直子教授は示し,古音源という「音」の文化資源に着目し研究することの興味深さを語った。2015年3月20日に神戸大学国際文化学研究科で開催された「私たちは何を録音してきたのか~古音源の保存と活用~」のイントロダクションにおいてである。 寺内氏は,古音源について,録音技術の歴史,録音物の使用目的,コレクションの来歴,保存,公開の手段といった切り口を挙げたが,近年急速にデジタル化が進む中で,特に公開の手段に変化が見られるという。その一例として,日本およびフランスから報告が行われた。 国立国会図書館(NDL)から
2015年CEAL年次大会・NCC公開会議<報告> 2015年3月25日から26日まで,残雪の米国シカゴにおいて,東亜図書館協会(CEAL)年次大会と北米日本研究資料調整協議会(NCC)公開会議が開催された。 会議開催に先立つ3月24日に,筆者は,シカゴ大学図書館の東アジア図書館およびマンスエト・ライブラリー(The Joe and Rika Mansueto Library)の図書館ツアーに参加した。1936年に設置された東アジア図書館には日中韓の資料が約85万点納められており,日本語の雑誌やその他レファレンス資料も充実している印象を受けた。一方のマンスエト・ライブラリーはガラス張りの卵形ドームが印象的な,2011年に開館した新しい図書館である。地上は閲覧室のみで,資料は全て,最大収蔵冊数約350万点の地下にある自動書庫に納められている。資料を出納する機械の動きは驚くほど滑らかで,利用者
危機に瀕した文化遺産のアーカイブ:英国図書館の10年の取組 リビアのティフィナグ語の碑文,マリ共和国トンブクトゥの手稿,ロマの民族自決運動黎明期の新聞,カメルーンの写真スタジオの写真,ギニアのセク・トゥーレ大統領時代の音楽,イランのラジオ番組…。これらの文化遺産はよく知られているとは言い難いが,政治的な紛争,自然災害等のさまざまな理由により,いずれも消滅の危機に瀕していたという。 英国図書館(BL)では,Arcadia財団の支援を得て,これらの消滅の危機に瀕した文化遺産をアーカイブする取組み“Endangered Archives Programme”(以下EAP)を2004年から実施している。EAPではこれまで,世界78か国の約250のプロジェクトに助成を行い,危機に瀕した文化遺産を当該地域の適切なアーカイブに移し,デジタル化し,その大多数をBLが運営するEAPのウェブサイトで公開してい
フランスにおける書籍デジタル化の動向 調査及び立法考査局海外立法情報課:服部有希(はっとり ゆうき) フランスは、文化・通信省の主導の下、フランス国立図書館(BnF)が中心となり、書籍等のデジタル化を推進している。その対象は、パブリック・ドメインの資料から始まり、著作権保護期間内にある著作物へと拡大しつつある。 本稿では、フランスにおける書籍等のデジタル化の進展を概観した上で、最新の動向である絶版書籍及び孤児著作物のデジタル化について紹介する。 書籍等のデジタル化の進展 BnFが書籍等のデジタル化を本格化させたのは、1997年の電子図書館Gallicaの公開からである。そのコンテンツ数は、現在、約290万点に達している(1)。 Gallicaの当初の構想は、主要作家の作品等を厳選した百科全書的なカタログの構築であった。しかし、2005年頃になると、方針が変更され、網羅的なデータベースの実
重要な歴史的文書やレアなエディションの本など、他にはない様々なジャンルのユニークなコレクションを保有するLAの図書館は、アメリカ国内において一目置かれる存在で、世界的に見ても、とてもレベルが高いと言われています。今回は数あるLAの図書館の中でも、ワールドクラスと言われる、特に有名な5館をピックアップしました。この機会に、歴史と文学の世界にはまってみてはいかが!? HUNTINGTON LIBRARY, ART COLLECTIONS AND BOTANICAL GARDENS (C)The Huntington Library The Huntington Library, Art Collections and Botanical Gardensは、2010年にはそのコレクションがハーバード大学をも超えたと言われる、アメリカ国内で最も大きな私立図書館です。英国とアメリカの歴史的書物に
ベトナムの図書館における目録作成ツール 慶應義塾大学大学院:木村麻衣子(きむら まいこ) 1. はじめに ベトナムの図書館に関して、日本語ではGiem Trinh(1)、黒古(2)、Nguyen Hoa Binh(CA1615参照)、松村(3)などにより散発的に短い報告がなされてきたものの、依然としてよく知られていないのが実情である。特に、目録作成に際してどのような目録規則や分類表が用いられているのか、現状を報告する文献はほとんど見当たらない。筆者は、漢字文化圏の典拠コントロールについて研究を進めていることから、2014年4月に、ベトナム国家図書館(The National Library of Vietnam: NLV)および国立科学技術図書館(National Library for Science & Technology)に対して、目録作成の状況に関する訪問調査を行い、通訳を介して
オンライン資料の納本制度の現在(2)スウェーデン 1. 電子出版物の納本制度の歴史 電子出版物の収集・保存は,スウェーデンでも長年の懸案である。CDやDVDなどのパッケージ系電子出版物は1993年の法改正で納本対象となったが,インターネット等で公表されるネットワーク系電子出版物への対応には多くの時間を要した。 この点に関して,ウェブ・アーカイビングで収集する国立図書館の実験事業「Kulturarw3」(CA1214,CA1490,E106参照)が注目される。しかし,同事業では,パスワードが必要なサイトなどは収集できない,特定のプログラムや技術的仕様に依存するサイトは収集したとしても長期的利用に困難があるなどの課題が指摘された。 このような事業の一方で法整備も試みられた。1998年と2003年には専門家で構成される政府調査委員会が法制化を念頭に報告書を公表したが実現せず,2012年にようやく
英国図書館(BL)では、2015年1月から、一部の閲覧室において、利用者のカメラ、携帯電話等でのセルフ複写を可能としています。とても好評を博したとのことで、2015年3月17日から、対象とする閲覧室を拡大し、Asian and African Studies、Business & IP Centre、Manuscripts Maps、Rare Books & Musicでも可能としたとのことです。 利用者のカメラ等によるセルフ複写が可能な資料の範囲についても追加を検討しているとのことですが、資料の量が膨大であること、また、著作権、データ保護、プライバシーや第三者の権利など資料の状態等、考慮すべき事項が多くあり、評価は容易ではないとしています。 また、撮影したデータについては、レファレンスの目的のみに使用し、著作権やデータ保護、プライバシーに関する法律を侵害するようなデータの共有やアップロー
そこでは本がモノになる。ハーバード大学図書館極秘の書庫の中2015.02.23 19:00 satomi ハーバード大学を代表するワイドナー記念図書館は、世界に48部しかないグーテンベルグ聖書が中央に奉納されている、まさに書物の神殿です。 が、ハーバードに90以上ある図書館の真の臓部は、ここではありません。もっと別の場所にあります。そこは何の変哲もない冷たいコンクリートの倉庫で、学生・教授陣でもその存在を知る人は数えるほどです。 名前は「ハーバード・デポジトリー」。場所はケンブリッジ市内のキャンパスから30マイル(48km)ほど離れたところ。見た目は図書館というより、アマゾンの倉庫に近いです。この総面積20万平方フィート(18,581平米)の広大な書庫には、ハーバード大学図書館の蔵書のうちかなりの部分に相当する900万点もの書籍、映像、LP、テープ、パンフレットが収蔵されているのです。 こ
2015年2月12日、ProQuest社が、フランス国立図書館が所蔵する1700年までの貴重書約5,800タイトル、200万ページのデジタル化を行い、同社の“Early European Books”のコレクションとして提供を開始したと発表しています。このプロジェクトでは、最終的に、28,000タイトル、1,000万ページをデジタル化し、提供する予定とのことです。 同社の“Early European Books”プロジェクトではデンマーク王立図書館、イタリア・フィレンツェ国立中央図書館、オランダ王立図書館、ウェルカム図書館などのコレクションをデジタル化して提供しているとのことです。 ProQuest Transforms Research with Digitization of Rare, Historical Works from Bibliothèque nationale de
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