新型コロナ禍とウクライナ戦争は、世界経済を大きな苦難に陥れた。国民の生活を維持し、回復させるには、政府と中央銀行の積極的な経済支援が重要だ。特に政府の積極的な財政刺激政策は「ケインズ政策」と呼ばれてもいる。本書は、今日でもきわめて重要な経済政策の主張者の論壇へのデビュー作になる。すでに古典的名著の評価があるが、その読みやすい新訳の登場を率直に喜びたい。 第一次世界大戦の講和条約を会議する場に参加したイギリス代表団の一員であったケインズは、その会議に参加した各国の首脳たちを風刺し、またドイツへの賠償金が過大であることを痛烈に批判した。ドイツの経済再生が賠償金によって不可能になれば、ふたたび欧州全域が不安定化してしまう。ケインズの主張は、当時、世界的な話題を呼んだ。その後、賠償金は減額されたが、やがて経済的に疲弊したドイツからナチスが生まれたのは歴史の教えるところだ。 ウクライナ戦争や、また中