田中邸を極秘訪問した竹入義勝氏 〈昭和47年7月23日夜、目白の田中角栄邸の通用門に1台の車が滑り込んだ。 正面玄関には警備の警官が常駐し、新聞社の車が止まっていることもある。人目を避けるために、あらかじめ訪問時間を決め、その時刻になると正面玄関脇の通用門がスッと開けられるのだ。そうしたやり方で、田中角栄と個人的にも親しいその人物は、これまでにも何度も田中邸を訪れていた。車に乗っていたのは、公明党委員長の竹入義勝(76=注・記事掲載時)だった。 応接間に通された竹入は、挨拶もそこそこに用件を切り出した。 「角さん、大平さんから聞いていると思うけど、北京へ行く。ついては、竹入という男を私も信頼していると、一筆書いてくれないか」 しかし、田中角栄の返答はつれないものだった。 「行くなら、行ってこいよ。だけど紹介状は書けないよ」 すかさず竹入は気色ばんで切り返した。 「お前さん、本気で中国をやる