大きすぎた犠牲は要人警護の教訓に生かされたのだろうか。 そうは思えない。 安倍晋三元首相は1年前の7月8日、奈良市の近鉄大和西大寺駅北口で演説中、犯人に後ろから7~5メートルまで接近され、撃たれた。 後方の警備が明らかに手薄なのに、奈良県警は対策をとらなかった。その13日前に同じ現場で自民党幹事長が演説して何もなかったからだ。警察庁は「警護員の配置が安易な前例踏襲で、適切な措置をとっていれば事件は防げた可能性が高い」と総括した。 警察全体が前例踏襲と形式主義に陥っていた。警察庁は要人警護の実際を都道府県警に任せ、首相についてのみ警護計画を事前報告させていたが、安倍氏については「元首相」のため関与しなかった。形式主義を打開すべく、警察庁は全ての警護対象者について警護計画を事前審査し、全面的に関与することとした。 だが新たな運用から8カ月後、今度は岸田文雄首相が和歌山で襲われた。演説直前に10