生還の見込みのない体当たり兵器に乗り込んだ若者たち。 戦局挽回、国民の士気高揚を目的に「一億総特攻」を打ち出す軍上層部、メディア。国民は特攻、そして特攻隊員をどう見ていたのか。 『特攻隊員の現実』では、前線、銃後の人びとの生の声をもとに、特攻を再現する。 本記事では前編〈特攻隊員は、遺される親や女性たちに何を思っていたのか…遺書や日記に書かれた「心の叫び」〉にひきつづき、出撃する特攻隊員の思いをみていく。 ※本記事は一ノ瀬俊也『特攻隊員の現実』から抜粋・編集したものです。 海軍少尉・林市造の葛藤と諦観 多くの隊員が残される親や女性を思いながらも、諦めを抱いて突入していった。その顕著なケースとして、林市造海軍少尉がいる。林は福岡出身、京大から14期飛行予備学生となり、神風特攻隊・第二七生隊員として1945年4月12日に戦死した。享年23。 彼の日記や遺書は『きけ わだつみのこえ』などの学徒兵