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短編小説に関するm25moriのブックマーク (73)

  • 口噤み人の羞恥

    学校で「自分の意見を発表しましょう」と求められるのが、苦痛だ。 生徒同士で物事を話し合う“グループワーク”の時間が、苦手だ。 自分の“思っていること”を口から出すのは、恐怖(きょうふ)でしかない。 意見を求められる場に居(い)るだけで、居(い)た堪(たま)れなくて、恥(は)ずかしい。 どうして私、こんなに“自分を出すこと”を恥ずかしく思ってしまうんだろう。 元から私は、自分の気持ちを言葉にすることが不得手(ふえて)だ。 心の内の、まだ自分でも上手く整理できていないモヤモヤを、何とか言葉にしてみるものの、全く相手に伝わらない。 変な風(ふう)に誤解(ごかい)されたり、「何言ってんの?」って顔をされてしまう。 たぶん、相手に理解(わか)ってもらえる“正解”の言葉を、ちゃんと選べていないんだ。 私の能力が足(た)りてないせいだと、分かっている。 毎度毎度のことで、もう慣(な)れっこになってしまっ

    口噤み人の羞恥
  • 恥知り人のプライド

    物心ついた時から、父親に得体(えたい)の知れない“畏(おそ)れ”を抱(いだ)いている。 うちの父は決して“見るからに恐いタイプ”ではない。 むしろ他人に対して愛想(あいそう)の良い、社交的なタイプだ。 だけど、何となく抗(あらが)い難(がた)い。何となく、逆(さか)らえない何かを感じる。 母親に対しては普通に反発できるのに。 我ながら、不可解(ふかかい)な心理だと思う。 そんな父は、昔から人の言うことを聞かない。 と言うより、俺の(・・)話を聞いてくれない。 自分の中だけで勝手に物事を決めて、それを俺に押しつける。 俺の意見などまるで聞かず、父が良いと思ったものを無理矢理強要(きょうよう)してくる。 塾(じゅく)も、空手教室も、市が主催(しゅさい)のサマーキャンプも、皆(みんな)そうだった。 ひどい時は「どうだ?」とも訊(き)かず「申し込(こ)んでおいたぞ」の事後承諾(じごしょうだく)だ。

    恥知り人のプライド
  • こんなにも不出来な私でも、生きていく他ないので。

    陽キャじゃないから他人と話せないだとか、コミュ力が無いから上手く関係性が築(きず)けないだとか、人づき合いの成否を性格(キャラ)や能力(スペック)のせいにする人間は多い。 だけど、私は知っている。 他人と上手くつき合えるかどうかは、結局のところ、自分に“ゆとり”があるかどうかだ。 気楽に他人と話ができる心の余裕(よゆう)、他人の心情や事情を酌(く)める精神の余裕――それがあるかどうか、だ。 どんな人格者でも、コミュニケーションの達人でも、自分のことしか考えられない切羽詰(せっぱつ)まった状況(じょうきょう)では、他人を思いやっているゆとりなんて持てない。 まして、気づけば自分のことでいっぱいいっぱいの私なんて、尚更(なおさら)そんなゆとりがあるわけがない。 私は元から、自分に自信の無い人間だ。 元から、自分が他の人間と“違(ちが)う”ことを自覚している。――それも、悪い方向で。 いつも、何

    こんなにも不出来な私でも、生きていく他ないので。
  • 無欲でドライな交友領域

    “万人(ばんにん)から好かれたい”なんて思わなければ、人づき合いは案外(あんがい)気楽なものだ。 “愛されたい”とどんなに願ったところで、“嫌われるのが怖い”とどんなに怯(おび)えたところで、他人の心は俺の自由にならない。 だったら俺の手の届く、それなり(・・・・)の交友関係で満足しておけば、無駄(むだ)に傷つくこともない。 来る者拒(こば)まず、去る者追わず――成(な)り行(ゆ)きに任(まか)せて流されるままに生きる。 きっと今の時代を生きるには、それが一番コスパが良い。 俺は自分の友人に、多くのものを求めない。 いつでも味方でいて欲しいだとか、常に俺を肯定(こうてい)して欲しいだとか、俺の言動に期待通りの反応(リアクション)を返して欲しいだとか、俺のことを理解して欲しいだとか――そんなことは思わない。 もちろん、その希望が叶ってくれたら嬉(うれ)しい。 だが、期待はしない。 人間相手に

    無欲でドライな交友領域
  • そつ無く生きられても、空しいばかりなんて | 言ノ葉スクラップ・ブッキング〜シーン&シチュ妄想してみた。〜

    JUGEMテーマ:青春(ヤングアダルト)小説 (このシリーズは「小説家になろう」さんにも同じ内容のものを投稿しています。小説家になろう版はブログ版よりもルビ多めです。) 周りが「今日のテスト最悪だった」と言うなら、私も「全然ダメだった」と返す。 周りが「炊飯器でケーキ作ると楽しいよ」と言うなら、私も「今度やってみるね」と言う。 当は、それほどテストが駄目だったわけでもないし、お菓子作りなんて調理実習以外でやったこともない。 だけど、大切なのは“合わせること”で、“自分を出すこと”じゃないんだ。 出来過ぎて鼻につくと思われないよう、出来なさ過ぎて馬鹿にされないよう、小器用に、巧(うま)く立ち回る。 ずっと、そうやって生きてきた。 たぶん私は、場の空気に敏感なのだと思う。 会話のキャッチボールで次にどんな言葉を投げ返せば良いのか、どんな 反応(リアクション)が求められているのか、何となく分か

  • そつ無く生きられない僕は、空気になりたいと希う

    僕はどうやら、生きているだけで他人を苛(いら)つかせてしまうらしい。 その場に居(い)るだけで、他人を不快にさせてしまうらしい。 だったら、誰の目にも映らない“空気”になれたら良いのに、と思う。 存在が消えるわけではなく、ただ誰からも認識(にんしき)されなくなる、透明(とうめい)な気体に。 誰からも疎(うと)まれず、そこに居ることすら気づかれない、ただその場に漂(ただよ)うだけの“空気”に……。 以前から薄々、気がついてはいた。 僕は普通の人よりだいぶ、要領(ようりょう)が悪い。雑な言い方をすれば、鈍臭(どんくさ)い。 他の人間ならそつ無くスムーズに熟(こな)せることに、何故(なぜ)だか妙にモタついてしまう。 小学生の頃は、大縄跳(おおなわと)びの中に入るのが苦手だった。 タイミングが掴(つか)めずに、何時(いつ)までもずっと、縄の回転を見送ってしまう。 やっとの思いで飛び込めても、大抵(

    そつ無く生きられない僕は、空気になりたいと希う
  • あの夏に置き忘れた君との記憶(プロトタイプ版)2 | 言ノ葉スクラップ・ブッキング〜シーン&シチュ妄想してみた。〜

    JUGEMテーマ:<オリジナル小説> ・「あの夏に置き忘れた君との記憶」の第2回です。(出来上がった所からUPする方式の不定期更新です。) 他のページはコチラ→あの夏に置き忘れた君との記憶1/3/4/5/6/7/ 「うー……ちょっと落ち着いてきた、かな?病院行くほどじゃないよ……たぶん」 「油断するなよ。意地張って平気なフリして、その直後に動けなくなったの、何度もあるだろ」 その『何度も』に、毎度つき合わされてきたのも創治(そうじ)だった。 愛理咲(ありさ)の 肉体(からだ)は "他の人と同じこと" を許してはくれない。 健康な人間なら何でもない "ちょっとした無理" が、愛理咲には重い体調不調に 繋(つな)がる。 幼い頃の愛理咲はそれでも "普通" にこだわり、我慢して不調を隠しては、隠しきれずにダウンしていた。 「うー……。そだね。様子見る……」 横になったまま、愛理咲は力無く答える。

  • 何にも知らない世界で出逢った、私の友だち | 言ノ葉スクラップ・ブッキング〜シーン&シチュ妄想してみた。〜

    JUGEMテーマ:青春(ヤングアダルト)小説 (このシリーズは「小説家になろう」さんにも同じ内容のものを投稿しています。小説家になろう版はブログ版よりもルビ多めです。) 物心ついたばかりの頃のことを、覚えている。 まだ世界のほとんどを知らなくて、何もかもが物珍しかった頃のことを。 蜘蛛(くも)水晶のような朝露や、シャボン玉の膜の虹色マーブルの揺らめきにさえ、いちいち心騒いで、ときめいていた頃のことを。 あの頃は「楽しい」や「おもしろい」のハードルが、驚くほどに低かった。 ほんの 些細(ささい)なことが楽しくて、おもしろくて、ずっと飽(あ)きずに遊んでいられた。 まるで 今(・)とは、世界からして違うみたいに。 私があの子と出逢ったのは、そんな、美しくて素晴らしくて――二度と戻れない世界の中だった。 いつ、どうやって出逢ったのか、最初のはじまりは覚えていない。 気づけばそばにいて、当たり前の

  • 何にも知らない世界で出逢った、私の友だち

    物心ついたばかりの頃(ころ)のことを、覚(おぼ)えている。 まだ世界のほとんどを知らなくて、何もかもが物珍(ものめずら)しかった頃のことを。 蜘蛛(くも)の巣に光る水晶のような朝露(あさつゆ)や、シャボン玉の膜(まく)の虹色マーブルの揺(ゆ)らめきにさえ、いちいち心騒(さわ)いで、ときめいていた頃のことを。 あの頃は「楽しい」や「おもしろい」のハードルが、驚(おどろ)くほどに低かった。 ほんの些細(ささい)なことが楽しくて、おもしろくて、ずっと飽(あ)きずに遊んでいられた。 まるで今(・)とは、世界からして違(ちが)うみたいに。 私があの子と出逢(であ)ったのは、そんな、美しくて素晴らしくて――二度と戻れない世界の中だった。 いつ、どうやって出逢ったのか、最初のはじまりは覚えていない。 気づけばそばにいて、当たり前のように一緒(いっしょ)に遊んでいた。 あの頃は、友達のハードルも恐(おそ)

    何にも知らない世界で出逢った、私の友だち
  • あの夏に置き忘れた君との記憶(プロトタイプ版)1 | 言ノ葉スクラップ・ブッキング〜シーン&シチュ妄想してみた。〜

    JUGEMテーマ:短編小説 ・「あの夏に置き忘れた君との記憶」の第1回です。 (出来上がった所からUPする方式の不定期更新です。) 他のページはコチラ→あの夏に置き忘れた君との記憶2/3/4/5/6/7/ 学校から帰宅すると、隣家の玄関先に幼馴染(おさななじみ)が落ちていた。 玄関タイルもコンクリート 舗装(ほそう)も、何もかもが白く 灼(や)かれて熱を放つ真夏の午後。 少女は日射しから逃れるように、 庇(ひさし)の作るわずかな 陰(かげ)に身を投げ出していた。 創治(そうじ)は "いつもの 悪巫山戯(わるふざけ)" だろうと、呆れ顔で声を掛ける。 「何やってんだ、 愛理咲(ありさ)。そんな所でノビると熱中症になるぞ」 愛理咲は起き上がらぬまま、泣きそうな顔で創治を見上げる。 「創君……。今日ウチ誰もいないのに、 鍵(かぎ)持って出るの忘れちゃった」 「ソレ、下手すると普通に死ぬヤツだろ!

  • 長編小説には無い、短編・掌編・SSの長所と魅力!|津籠睦月

    皆さん、短編小説(掌編・SS含む)は「長編小説が書けない人」の書くものだと思ってはいませんよね? あるいは「短編小説は長編小説に劣っている」なんて考えたりもしていませんよね? 上のように考えるのは、きっとこれまで「素晴らしい短編小説」に出会ったことがない方々なのでしょうが… どうにも世の中「長編>短編」のように思っている人が多い気がするので、今回はそのあたりを深掘りしていこうと思います。 ここで言う短編小説は、長編の「おまけ」的な短編(SS)ではなく、それ1つだけで独立した短編小説のことです。 (独立した短編か、「おまけ」や「外伝」的な短編かで、難易度が雲泥の差のため。) 短編の方が長編より難しい!人にもよることなので、ハッキリとは言えないのですが… 少なくとも自分にとっては「短編に比べたら、長編の方がずっと易やさしい」ものでした。 芸術は、足し算よりも引き算の方がずっと難しいのです。 皆

    長編小説には無い、短編・掌編・SSの長所と魅力!|津籠睦月
  • 理解ってくれない貴女への反抗期

    反抗期と言うのは、思うように行かない現実への拒絶反応なのかも知れない。 卵アレルギーの肉体(からだ)が卵を受け付けないように、あんまりな現実を精神(こころ)が受け付けないのかも知れない。 世界がいつの間にか優しくなくなったことに対する、拒絶反応。 肉体が俺を裏切って、勝手に大人になり始めたことへの拒絶反応。 家族の言動に、何故(なぜ)だか妙に苛(いら)つくことへの拒絶反応。 そもそも“家族に対する目”自体、この頃(ごろ)は変わってしまった。 幼いうちは心のどこかで、親は自分より優(すぐ)れたものだと思っていた。 俺より大人で、正しくて――だから、叱(しか)られるのは仕方のないことなのだと、全てを諦(あきら)めて受け入れていた。 だけど、もう気づいてしまった。 あの人たちは、分かっていない。 あの人たちの言動は、時々矛盾(むじゅん)している。 あの人たちはきっと正しくなんかなくて、いろいろと

    理解ってくれない貴女への反抗期
  • 正解探しの怖がり鸚哥

    私の父は、厳(きび)しい人だった。 間違(まちが)ったことを決して許(ゆる)さない、四角四面(しかくしめん)な“掟(おきて)の神”。 いつでも絶対の“正解”を持っていて、私が“不正解”な言動をすると、すぐ叱責(しっせき)された。 間違ったことをする私は、人間として正しくないのだと、人格や存在を否定された。 私は父を恐れていた。 いつも父の顔色を窺(うかが)って、ビクビク生きてきた。 出すべき答えは、世の中にとって(・・・・・・・)の正解ではない。父にとって(・・・・・)の正解だ。 世間的には合っていそうな答えでも、父にとって正解とは限らない。 正解を選べないと、父は機嫌(きげん)を悪くする。 世の流行の、アレは嫌いでコレは好き、物の考え方・感じ方、事の順番、後片付けのやり方、勉強の優先順位……来“正解”なんて無いはずなのに、父の中には“正解”があり、それ以外は“間違い”なのだ。 父好み

    正解探しの怖がり鸚哥
  • 最高の生き様のための人生を | 言ノ葉スクラップ・ブッキング〜シーン&シチュ妄想してみた。〜

    JUGEMテーマ:青春(ヤングアダルト)小説 (このシリーズは「小説家になろう」さんにも同じ内容のものを投稿しています。小説家になろう版はブログ版よりもルビ多めです。) 幼い頃は、ヒーローや偉人に憧れる人間なんて、周りを見れば、そこら中にいた。 なのに、大きくなるにつれ、その数は減っていった。 皆、歳を重ねていくと、その手の“憧れ”からは卒業していくものらしい。 どうしてそんな“もったいない”ことをするんだろうと、幼心に不思議だった。 フィクションがフィクションに過ぎないこと、伝記や歴史モノがあくまで“過去”の物語だということは、大きくなれば嫌でも分かる。 現実の“悪の秘密組織”は、特撮ドラマのように分かりやすい暴力で街を襲ったりはしない。 外国のどこかに潜んで、電話やメッセージで詐欺(さぎ)や強盗の“指示を出すだけ”だ。 実行犯も、怪人ではない。利用されやすい“ただの人”だ。 戦って倒せ

  • 最高の生き様のための人生を

    幼い頃(ころ)は、ヒーローや偉人(いじん)に憧(あこが)れる人間なんて、周りを見れば、そこら中(じゅう)にいた。 なのに、大きくなるにつれ、その数は減っていった。 皆、歳(とし)を重(かさ)ねていくと、その手の“憧れ”からは卒業していくものらしい。 どうしてそんな“もったいない”ことをするんだろうと、幼心(おさなごころ)に不思議だった。 フィクションがフィクションに過ぎないこと、伝記や歴史モノがあくまで“過去”の物語だということは、大きくなれば嫌(いや)でも分かる。 現実の“悪の秘密組織”は、特撮(とくさつ)ドラマのように分かりやすい暴力で街を襲(おそ)ったりはしない。 外国のどこかに潜(ひそ)んで、電話やメッセージで詐欺(さぎ)や強盗の“指示を出すだけ”だ。 実行犯も、怪人ではない。利用されやすい“ただの人”だ。 戦って倒せばそれで良いなんて、単純明快(たんじゅんめいかい)なものじゃない

    最高の生き様のための人生を
  • ないものねだりの強がり狼

    それは、高校卒業を間近に控えた、ある放課後のことだった。 たまたま、あるクラスメイトと、教室に二人きりになった。 それまで、ほとんど話したこともない相手だ。 だけどその時は何となく、どちらからともなく会話を始めていた。 あと少しすれば、もう毎日顔を合わせることもなくなる。 そんな、しんみりとした感傷(かんしょう)が、お互い、胸の底に湧(わ)いたのかも知れない。 「当は、ずっと話してみたかったんだ」 彼女は、そう言った。 まるで、憧(あこが)れの相手に気後(きおく)れして、話しかけられなかったとでも言うように。 「いつも、すごいな……って、思って見てたんだ」 彼女は、私を褒(ほ)めちぎる。 自分の道を貫(つらぬ)く、クールなところが格好良(カッコイ)い。 早いうちから目標を決めて、ちゃんとそこへ向かっていけているのが、すごい。 それに比べて、自分は平凡で、目標も何も見えていなくて、恥ずかし

    ないものねだりの強がり狼
  • 人生の果てるまでを看ている。

    人生の果ての、崖(がけ)っぷちを歩いているような気が、ずっとしている。 世界が暗い夕闇の中、閉ざされているような気が、ずっとしている。 この先、もう何処(どこ)へも行けない、行き止まりの人生――そんな気が。 祖父の病気が分かって以来、ずっとだ。 祖父の病は、治(なお)ることがない。 進行を遅(おく)らせることはできても、完治(かんち)することの無い病。 高齢で体力が心配だからと、手術もやんわり拒否されるような、そんな状態だ。 長い入院を終えて帰って来ても、筋肉の衰(おとろ)えきった祖父に、以前のような生活はもう出来(でき)ない。 一日中、ベッドに縛(しば)りつけられたように、寝たきりの日々。 生きるために、人の手を借りなくてはどうにもならない身体(からだ)。 そして、俺たちの生活もまた、祖父の退院とともに一変してしまった。 一番広くて居心地(いごこち)の良かった居間には、介護用のベッドが運

    人生の果てるまでを看ている。
  • 「です・ます調」一人称小説への初挑戦(初めての文体は短編やSSで試しながら)|津籠睦月

    初めて使う文体で、いきなり長編小説を書くのは危険です。 その文体が、自分にとって書きづらい「苦手な文体」だった場合、筆が止まって、それ以上書けなくなるリスクがあるからです。 なので自分の場合、新しい文体にチャレンジする際には、短編やSS、長編の中の「1つの場面だけ切り取ったもの」などで「試し書き」のようなことをします。 「です・ます調」の一人称に初チャレンジした時もそうでした。 一般的な「小説」ではあまり見ない気がする「です・ます調」一人称ですが(←三人称なら児童文学などでよく見ますが…)、不思議と小説投稿サイトではよく見かけます。 紙の書籍に慣れ親しんだ自分には、正直、初めは「違和感」があったのですが… 投稿サイトで見慣れていくうちに、逆に興味が湧いてきました。 「自分がこのスタイルで小説を書いてみたら、どんな物語が出来上がるんだろう?」と。 このスタイルに挑むにあたって、ひとつ不安だっ

    「です・ます調」一人称小説への初挑戦(初めての文体は短編やSSで試しながら)|津籠睦月
  • 花咲く話の種を探して、私は今日も言の葉を「はなつ」

    この国では、人の口から発せられる“意味ある音”を、植物になぞらえる。 言(こと)“葉(ば)”。話の“種”。話の“接(つ)ぎ穂(ほ)”。話に“花が咲く”。 昔の人たちは、何を想って、この名付けをしたのだろう。 人の口から放たれた“言(こと)”が、視(み)えざる葉になって空(くう)に繁(しげ)り、他の人のそれと重なり合って、花を咲かせる――そんな空想(ゆめ)でも、視ていたのだろうか。 私も時折、そんな妄想に浸(ひた)る。 私の唇(くちびる)から零(こぼ)れた葉っぱが、蔓(つる)を伸ばし、さらなる葉を繁(しげ)らせ、花束(はなたば)のように、たくさんの花を咲かせる――そんな幻を、夢見る。 実を言うと、おしゃべりは少し苦手だ。 自分の言葉に、自信が持てない。 私には、皆を笑わせるような面白い話はできない。気の利(き)いた話題は出せない。 いつも、皆の輪の中で、誰かに話を振(ふ)られるのを待っている

    花咲く話の種を探して、私は今日も言の葉を「はなつ」
  • 電車で5分、日常からのプチ逃避行 | 言ノ葉スクラップ・ブッキング〜シーン&シチュ妄想してみた。〜

    JUGEMテーマ:青春(ヤングアダルト)小説 (このシリーズは「小説家になろう」さんにも同じ内容のものを投稿しています。小説家になろう版はブログ版よりもルビ多めです。) 夢を見た。 学校へと向かう、いつもの電車の中。 既に眠りの中だと言うのに、なぜか夢の中でも眠り込んでしまっていた。 気づけば、いつもの駅を乗り過ごし、夢の中でハッと目を覚ました。 見渡すと、そこは見知らぬ山の中だった。そして、一面が紅葉の絶景だった。 動画や写真の中でしか見たことのない――否、それ以上に極上で、胸に迫る、圧倒的な秋色の稜線。鮮やかな、朱と黄金のモザイク模様。 電車の窓という窓が、その景色で埋め尽くされていた。 電車がレールを進むたび、朱金の木々が、わずかに角度を変えながら、横に流れていく。 硝子一枚隔てた向こうは、色鮮やかな紅葉黄葉(こうよう)の洪水。 まるで、絢爛豪華な万華鏡の中を、電車の速度でくぐり抜け