政治学の世界では、諸々の政策において追求される価値は、「福祉価値」と「威信価値」の二つに大別される。「福祉価値」とは、衣食住に絡む人間の生存の条件に関するものである。「威信価値」とは、正義、平和、威信、尊厳、イデオロギーといった抽象的な観念に関するものである。 たとえば、教育政策で「福祉価値」が強調されれば、「大人になってから食いはぐれないようにするための知識や技術を完璧に身に付けましょう」という話になる。方や、「威信価値」が過剰に強調されれば、戦前日本の「皇民教育」や現代中国での「反日教育」、あるいは北朝鮮における「将軍様、万歳」教育と同じ風情になる。保守層の「愛国心」教育と日教組の「教え子を戦場に送るな」教育が、いつもヒート・アップしながら交錯しているのは、どちらも教育政策における「威信価値」を重視しているからである。 安全保障政策の展開に際して、この「福祉価値」と「威信価値」のどちら
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