「NHK出版新書を探せ!」第1回 なぜ日本は自粛のお願いしかできないのか――大屋雄裕さん(法哲学者)の場合〔前編〕 突然ですが、新書と言えばどのレーベルが真っ先に思い浮かびますか? 岩波新書、中公新書、講談社現代新書……そこでNHK出版新書を挙げる人は、なかなかにマニアックな方だと言えるでしょう。老舗の新書レーベルにはまだ敵わなくても、もっとうちの新書を知ってほしい! この連載は、編集部のそんなささやかな抵抗から生まれました。題して「NHK出版新書を探せ!」。今を時めく気鋭の研究者の研究室に伺って、その本棚にある(かもしれない)当社新書の感想とともに、先生たちの研究テーマや現在考えていることなどをじっくりと伺います。コーディネーターは当社新書『試験に出る哲学』の著者・斎藤哲也さんです。 <今回はこの人!> 大屋雄裕(おおや・たけひろ) 1974年生まれ。慶應義塾大学法学部教授。東京大学法学
Takehiro OHYA @takehiroohya いやまあ理由はいろいろあったんだけど従来は定年が一般公務員60歳に対して検察官63歳だったところ前者を65歳に伸ばすんだから後者もそれなりに引き上げないとまずいだろ常識的に考えて(頭痛)。 Takehiro OHYA @takehiroohya ①なんか検察庁法改正案に反対してる方々がおられるようですが、まずテクニカルに言うと「国家公務員法等の一部を改正する法律案」です。衆議院の議案のページでも確認できますね。同法案には、国公法と警察法・自衛隊法・教育公務員特例法など30の法律の改正が含まれます。 shugiin.go.jp/internet/itdb_… Takehiro OHYA @takehiroohya ②もちろん検察庁法もその一つですが、ここからもわかるとおり、国家公務員全体に関する定年制度の改正がまず中心にあり、個々の事情
「高度なAIを制御するためには、AIをモノとして扱うしかない。たとえ理解できなくてもAIを信頼することが重要だ」――SF小説「BEATLESS」の作者・長谷敏司(hose_s)さんは、こう話す。 6月23日、ジュンク堂書店池袋本店でトークイベントが開催された。長谷さんの他、慶應義塾大学法学部の大屋雄裕(@takehiroohya)教授が登壇。コンサルティング企業・マカイラの工藤郁子(@inflorescencia)上席研究員が進行役を務めた。BEATLESSや有斐閣の書籍「ロボット・AIと法」(有斐閣)を基に、ロボット・AIと人間が共存する社会について議論した。 BEATLESSは、「hIE」(エイチアイイー)と呼ばれる架空の人型ロボットが普及した22世紀が舞台。2051年にシンギュラリティ(技術的特異点)が起きたという設定で、人類の知能をしのぐ「超高度AI」と呼ばれる汎用人工知能も完成し
戦時中に投下された不発弾を処理する費用は自治体や国が負担すべきだとして、大阪市の不動産管理業の男性(59)ら3人が市と国に576万円の支払いを求めた訴訟の判決が26日、大阪地裁(比嘉一美裁判長)であった。「国・市に費用を負担する法的義務はない」と訴えを棄却した。 男性らは、南海難波駅から徒歩数分の同市浪速区に土地を所有。2015年3月、戦時中に投下されたとみられる米国製1トン爆弾が見つかり、市は交通規制のチラシ作製費など約190万円を負担し、同年5月の撤去作業は陸上自衛隊が担当。一方、爆発に備えた土囊(どのう)の防護壁や、周辺警備の費用576万円は、市が男性らに負担させていた。 判決は、国や市に支払い義務があるとするには「明確な法令の規定があるか、支払わないことが著しく妥当性を欠いている場合だ」と指摘。原告側が根拠とした地方自治法などには不発弾についての明確な規定がなく「支払い義務を課すも
日本国憲法http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S21/S21KE000.html 「第二十四条 婚姻は、”両性”の合意のみに基いて成立し、”夫婦”が同等の権利を有することを基本とし…」(””は引用者強調)単純に読むと、これを根拠に現憲法下では同性婚は認められないようにも思えるが、実は今の業界の議論では・・・名古屋大大学院法学研究科教授、ブログ「おおやにき」でも有名な大屋雄裕氏@takehiroohya氏が解説します。 ※連動はしていないのですが、同じテーマで語った別の専門家(憲法)木村草太氏@SotaKimuraのツイートも追加。だいぶタイムラグがあるので注意 ※2015年2月、渋谷区の政策を報じるニュースの関連記述を採録
まあパリでもロンドンでも見た人にはわかる通り移民は緩やかであれクラスターを作って集住するのであり、その背景としては彼ら自身の生活の便宜も大きい(彼らを集める社会的圧力の存在を否定するものではない)。母語で会話する相手がいて食料品店があって言葉の通じる専門職がいる方が安心でしょ?
従軍慰安婦問題報道に対する脅迫に、北星学園大学が屈したらしい。NHK等が報じている。 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141031/k10015841411000.html 関係者によりますと、北星学園大学の田村信一学長は、29日の学内の会議で来年度は元記者を雇用しない考えを伝え、理由として、警備などを念頭に問題の対応に当たる人手や財政面の負担が大きいことや、来年の入学試験が無事に行えるかどうかの不安を挙げたということです。 http://www.asahi.com/articles/ASGB06D5GGB0IIPE03D.html 慰安婦問題の記事を書いた朝日新聞元記者の植村隆氏(56)が非常勤講師を務める北星学園大(札幌市厚別区)に、植村氏の退職を求める脅迫文が届くなどした問題で、田村信一学長は31日、植村氏との来年度の契約について、更新しないことを
さて前エントリで触れなかったのが、議会多数派による意思決定がいかなる個人も基本的人権を奪われてはならないとする(1)リベラリズムに反していた場合にはどうするか、という問題である。まず確認すべきなのは、この点に関する最終的な判断は憲法98条1項および81条によって裁判所に委ねられており、ということは実際に損害が発生したことを前提に提起される訴訟においてしか確定されないということである。だがもちろんそれは立法が実現したあとの・事後的段階であり、そこにおける判断を踏まえて投票の場面における意思決定を行なうことは端的に不可能である。我々は、事後に裁判所がどのように判断するかを予期し、その予期に対して賭けざるを得ないということになるだろう。 だがもちろん我々としてはできるだけ分のいい賭けを挑みたいだろう。そこで私としては、内閣法制局が行なう法令審査を信頼することが一つの相当安全な手段になると考えてお
多少長くなりそうなので、久しぶりにブログで書く。まず特定秘密保護法案とその採決過程に関してtwitterで書いたところ、法華狼氏(はてなID:hokke-ookami)がHatena Diaryで「[ネット][トンデモ]「少数派の意見や権利を守る」「少数派に意見表明の機会を与えたら淡々と採決すればいい」どっちだよ」という文章を書かれたので、twitter上で以下のように言及した。 特定秘密保護法案は内閣提出法案である(=法制局審査を通っている)という程度の違いにも気付かないレベル、ということで。 RT @hatenaidcall @takehiroohya id:hokke-ookamiさんから言及がありました http://t.co/mB2BvQq4kC — Takehiro OHYA (@takehiroohya) 2013, 11月 28 もうちょっと丁寧に言うと、整合性や強制可能性
Takehiro OHYA @takehiroohya ところで東京新聞で憲法96条改正に関する特集記事があって辻村先生などがコメントしている、というので見てきた。4月13日付のこの記事で、私が読んだ実物は中日新聞のもの。結論から言うと、やはりひどい。http://t.co/sYZg195glI Takehiro OHYA @takehiroohya 憲法改正あるいは96条改正の是非については措く。個人的には、現憲法は統治機構に直したほうがいい部分を抱えていると思い、憲法改正の要件を通常の法律より重くするのは当然だが現行規定は重くしすぎていると思うが、問題はこういった点ではなくコメント(あるいは記事)が嘘を並べているところ。
大阪市立桜宮高校の男子生徒が自殺した事件以来、体罰をめぐる議論がかまびすしいようである。「義家政務官「体罰ではなく暴力だ」 自殺の事実解明指示」(asahi.com)などという報道もあり、これに対して「体罰は暴力に決まっているだろう」と反発している人々も見受けられ、一方では前者が必然的に有形力の行使を伴う以上その通りなのだが、「死刑によって殺人は減る」と主張している人に対して(いやその当否はともかくな)「死刑は国家による殺人にほかならない」と言うようなもんやな、とも思う。法による統制を受けていることによって死刑が単なる殺人とは区別されている(ことになっている)のと同様に、体罰も統制されていない暴力とは違うよねという立場もあるだろう(再び、その当否はともかくとしてだ)。要するに出だしの定義問題から混乱しているので、互いにわら人形を叩いている部分がある。 管見の限りではあるが、よほど極端な人を
学内ネットワークが妙に重かったところ「アノニマスか?」とか「うちの大学にカスミ何とかとか、あったっけ」とかいう会話に展開する平和な午前(挨拶)。ところで問題の著作権法改正によってYoutubeやニコニコ動画を見ているだけでも摘発される可能性が生じたと主張している人々がいるらしい件について。うんまあ半分は正しいけど半分しかしか正しくないな。 (1) まず問題を正確に確認しておくと、修正案で加えられた119条3項の理解ということになる。正確な条文は衆議院のサイトで確認できるが、枝葉を除いて本筋だけに刈り詰めると以下のようになる。 私的使用の目的をもつて、有償著作物等の著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、自らその事実を知りながら行つて著作権又は著作隣接権を侵害した者は、二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。 つまり特
話題になっていた違法ダウンロードの犯罪化を含む著作権法改正案が15日中に衆議院文部科学委員会・本会議で可決されたとのこと(「リッピング違法化+私的違法ダウンロード刑罰化法案、衆議院で可決 」Internet Watch)。報道もされている通り今国会は議案の処理が非常に低調で、内閣提出法案ですら5月23日段階で25%弱という水準にあり、会期末が6月21日に迫っていることもあって(まあ衆議院の優越があるので延長しようとするだろうけど)このまま潰れるんじゃねえかなと思っていたところである。どうも与野党で対立していない法案についてはやっぱり処理しておこうと、ギリギリになってそういう空気になったようには見える。 さて本件についてはすでに書いたことがあるが、内容面については現在の民事違法規定も活用できていない状況でさらにハードルの高い刑事制裁を追加しようとするもので、威嚇効果を除けば実効性は期待できな
著作権法を改正して音楽・動画の違法ダウンロードに刑事罰を導入しようという案件について。すでに2010年から違法行為との位置付けはされていたが、その際には見送られた犯罪化をしようという動きがあり、4月13日の自民党文部科学部会で改正案が了承され(山本一太議員のブログ)、政府・民主党も「著作権者の許諾なしにインターネットのサイトから音楽や動画を違法ダウンロードする行為に罰則を科す方針を固めた」との報道である(47news)。 ここで書きたいのはこれがどういう経過を示しているのかということで、というのは「しかも今回、途中までは議員立法でやるという話だったものが、突然どさくさにまぎれて閣法に盛り込まれた。立法プロセスとしても相当タチ悪いよこれ。関係者呼んでヒアリングさせて「十分議論して進めますので」と宣言してから1カ月も経ってないのにこんな手段で通そうとする。ふざけんなよって話。」(twitter
■ 三菱電機ISに求められているものは何か 岡崎図書館事件(10) 今日の読売新聞朝刊社会面に次の記事が出ていた。 図書館システム不具合…三菱電機系 情報流出・蔵書検索が「サイバー攻撃」か?, 読売新聞2010年11月29日朝刊社会面 図書館利用者100人以上の個人情報が流出したほか、蔵書を検索しただけで「サイバー攻撃」と誤解された男性が偽計業務妨害容疑で逮捕され、その後、システムに原因があったことも分かった。同社は近く調査結果を公表し、関係者に謝罪する。 (略)MDISは06年には不具合を改良し、その後に納入した図書館には改良版を提供していたが、今回、岡崎市から障害の相談を受けた際には「システムに原因はない」と回答。このため図書館は警察に被害届を出していた。MDISは「保守担当者がシステムをよく理解していなかった」として、逮捕された男性への謝罪の意を表明する方針。 三菱電機ISが近く発表
いやいや何を言っているんだ自衛隊は国家の暴力装置に決まってるだろう(参照:「仙谷氏「自衛隊は暴力装置」 参院予算委で発言、撤回」(asahi.com))。国家が(ほぼ)独占的に保有する暴力こそがその強制力の保証だというのは政治学にせよ法哲学にせよ基本中の基本であり、その中心をなすのが「外向きの暴力」としての軍隊と「内向きの暴力」としての警察である。で、日本では主として歴史的経緯によりこの両者が相当明確に区別され、かつ現実的にもあまり仲が良かったり悪かったりという話があるわけだが(戦前ならゴーストップ事件が典型ね)、フランスやイタリアにある国家憲兵隊制度や、発展途上国に多い警察軍制度に示されているように暴力としての本質に違いがあるわけではなく向きを変えれば同じものであると、そう整理されることになる。 その上で、まあ法哲学的にはゆえに国家は本質的に悪であるとする立場と、しかしこの暴力抜きには社
ところで本シンポジウムについては朝日新聞の記者の方が取材されていたようで、以下のように記事になっている(「岡崎図書館問題で討論」asahi.com)。 パネリストの名古屋大学大学院法学研究科の大屋雄裕准教授は「技術者は図書館システムに欠陥があることも想定すべきで、逮捕された利用者と図書館の間で事前に協議があれば事件にならなかった」と指摘。 まずベストプラクティスが実践できなかったことを「問題」と表記する。 この時点で、それが日常用語としての"問題"とは違うことが含意されているし、まして刑事・民事上の責任を問える水準の話とはまったく異なることは明らかにしている(私がカギ括弧とかを使うときは当然に意図的なので、たとえば「誤認逮捕」というのは誤認逮捕ではない。誤認逮捕が発生すれば警察なり検察なりが謝罪すべきということになろうが、誤認逮捕だと当事者とか社会の一部が思うとしても法的には不適切と言えな
でまあその。企画者の側からは当日のプレゼンテーションを公開してもらえないかという依頼も受けたのですが、いやソースに基づく議論という研究者であれば基本中の基本と言ってよいふるまいができないのか故意にしないのか、とにかくそういう人々がこれだけ群れているところに・口頭で説明/補足することが前提の資料を出すとか、さすがに私でもそういう餌の与え方はできないねえ。教祖さまが自分の無謬性を守るために好き勝手利用しはじめるに決まってるんじゃないかな。 しかしまあ私はいらんこと親切なので、当日来ていた方なら個々の話題がどのように全体の枠組に対応しているのかがわかるように追加の説明をする。ちょっと参加者の興味を引くために構造が見えにくくなったところはあるかなあと思ってもいるのでね。なお刑法理論の観点から「そんなに簡単に書いていいのか」と思う人はいるでしょうが、そこは割り切ってわかりやすさを優先しました。さて。
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