第1回 それは米騒動から始まった 農と食について、戦前期から現在に至る歴史を追いながら考えてみる。それはそのまま民衆の生きた歴史に重なり、傍らにはいつも戦争の影があった。1回目は、近代日本における食料問題の発端ともいえる大正期のコメ騒動から取り上げてみたい。 第1次世界大戦(1914-18)を境に、世界は大きく変わった。当然、日本の社会も揺れ動いた。 1915年、大戦景気に沸く日本、翌々にはロシア革命が起こり社会主義国が誕生する。この時期、日本では交戦国への軍需品輸出などで企業の生産活動は大きく伸び、株や商品への投機ブームが巻き起こった。船成金、鉱山成金、株成金が輩出したのもこのころだ。物価が上がり始め、1917年に入り、とくにコメが高騰をはじめた。翌年1月には米価暴投で米穀取引所が取引を中止するまでになった。4月には外米輸入令が公布され、政府が買い入れた外米を安く売り出す。とりわけ朝鮮米