気になる記事をスクラップできます。保存した記事は、マイページでスマホ、タブレットからでもご確認頂けます。※会員限定 無料会員登録 詳細 | ログイン もう20年以上も昔のことになる。 私は、世界最大48万トンのタンカー「日精丸」の試運転で性能担当をしていた。長さが360メートルもある巨大船である。 広島県の呉から長崎県五島列島沖まで往復、つまり九州をほぼ2周しながら1週間がかりで試運転を行う。私は、船の速力や操縦性能、波の中での性能を最適設計するグループに移動したばかりだった。「日精丸」は3隻シリーズの最終船だったので、新人の私に試運転での性能担当という大役が回ってきた。 試運転には船を運航する乗組員の主要メンバーが乗っている。船長になる予定の方が私に聞いた。 「この船、ちゃんと止まりますか?」 彼は、それまで20万トン級までしか船長の経験がなかった。48万トンの船を操縦する責任者になるこ