「家を『つくる』ことばかりに目を向け、つくった住宅を『引き継ぐ』『たたむ』ことに目を向けてこなかった――」。近年の「空き家問題」を明治大学教授の野澤千絵氏はそのように分析する。増加する一方の空き家をめぐって、深刻化する現状に迫る。 (『中央公論』2021年12月号より抜粋) 日本人は長年、自分の土地や家を持つこと、「一国一城の主」になることを夢見る国民性でした。にもかかわらず、今、「所有者不明土地問題」や「空き家問題」が深刻化するという不思議な状況を生み出しています。 これら二つの問題が起きている根本的な要因は同じです。少し前までは、先祖代々の土地や家は引き継ぐことが当たり前のものでした。しかし、地方から都市への人口流出や核家族化の進展を背景に、田舎の土地や家は価値ある資産という見方が少なくなりました。また、不動産登記制度の不備もありますが、自身に相続権がまわってきていることすら知らないな