足許、エネルギー資源価格や穀物などの価格上昇と、このところの円安進行によって、国内の物価は上昇している。家計の生活負担が追加的に上昇する恐れは高い。企業が収益を得るためにも、経済全体で賃上げを目指すことの重要性は高まっている。 ただ、官邸主導の賃上げが、これから持続的な賃金上昇につながるか否かは疑問だ。過去の経験から言っても、おそらく、わが国の賃金が上昇しつづけることは期待しづらいだろう。 重要なポイントは、民間企業が自主的に賃金を上げるような仕組みを定着させることだ。わが国では、多くの企業が“終身雇用・年功序列”という雇用慣行から脱することができていない。そうした旧態依然とした労働慣行の下では、経営者側は賃金を上げなくても、ある程度の人材の確保が可能になる。 一方、労働者側も、自分の能力を向上させて、より高い賃金を望むよりも、企業の中での自分のポジションを確保するほうが安心していられる。