慶應義塾の創立者で、日本人の思想の近代化に貢献した福澤諭吉が欧米諸国を視察したのは、幕末の1860年代前半、150年以上昔の話だ。 帰国後出版した『西洋事情』に、英国議会を見学したときの話がある。 主張の対立する2つの政党が政策をめぐって大論争をしていた。ところが、議会が終わると一緒のテーブルで酒を酌み交わし、食事を始めた。西洋では日常的な光景が、福澤の目には奇異に映った。 議会の中ではお互いの主張を容赦なくぶつけ合うが、議論の後は仲間として付き合う。福澤は意見の異なる人間を尊重する精神を学んだという。 昨年、安全保障関連法制の審議中、学生グループ「SEALDs」(シールズ)が「民主主義ってなんだ!」と叫んでいたが、民主主義とはまさにこれである。口調は熱く激しくとも、発言の内容には品位と礼節を保ち、論理的かつ冷静に議論することが民主主義の根幹である。 議論の参加者全員が、問題の解決を一緒に