堺支局に赴任して8カ月。昨年末、お世話になった方々に年賀状を書いていたら、はたと気が付いた。堺市堺区の「北旅籠町」と「南旅篭町」。同じ「はたごちょう」なのに、「籠」と「篭」が使い分けられているのはなぜだろう。調べてみると、地名の漢字一つにも堺の歴史が刻まれていることがわかった。 「籠」「篭」はいずれも常用漢字になく、新聞記事ではふつうは使わない。まず「広辞苑」で「はたご」を引くと、なぜか、「旅籠」はあるが「旅篭」は見当たらない。「旅篭」は本当は間違いなのだろうか? 今度はつくりの「りゅう」について漢字事典を調べると、「龍」は法務省令で定める人名用漢字、「竜」は常用漢字に含まれている。いずれも人名などで使える漢字で、滋賀県竜王町や長野県天龍村など、全国各地の市町村名の表記も混在している。 堺市の住居表示係に聞くと、二つの町は南北で約2・5キロ離れ、旧市街地の北と南の玄関口だった。