かつて外務省は、表記法もやや独特な決まりを有し、「ベトナム」 (Việt Nam)を「ヴィエトナム」としていると報道された。「ヴェトナム」は一般にも見られ、内閣告示・訓令の認める範囲にあろう。これは漢字で書けば「越南」であり、日本の新聞などでも、ベトナム訪問は「訪越」、中国とベトナムは「中越」などと省略されることもある。かつての「訪ベト」や「ベ平連」は、漢字離れをした略し方だった。こうした漢字による略記は、日本となじみ深い国であることの証左となる。学生たちは、すでにベトナムのこの1字での略を忘れつつある。国境紛争の記憶も薄れ、新潟の人には新聞見出しの「中越」は、つい新潟中央部の中越地方に見えてしまうと言う。漢字への反応には、国内でも小さめながら地域差がある。 この国名の漢字表記は、「アメリカ」を「亜米利加」と書くの似ているようだが、これは本来、ベトナム人自体が選択した字と語であり、当て字と
![第92回 越の国の漢字 | 漢字の現在(笹原 宏之) | 三省堂 ことばのコラム](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/50e49b64a9c343fdba3982ddf5841d07247ea6be/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fdictionary.sanseido-publ.co.jp%2Fwp-images%2Fcolumn_sasa%2F92_1.jpg)