○玉木俊明『近代ヨーロッパの誕生:オランダからイギリスへ』(講談社選書メチエ) 講談社 2009.9 近代ヨーロッパの成立過程を、オランダからイギリスへというヘゲモニーの移譲プロセスを軸に、主に経済史の立場から論じたもの。「オランダ→イギリス」と聞けば、即座に東インド貿易を連想するのが日本人の性だが、本書の着眼点はこれと異なる。 16世紀前半、ヨーロッパ経済の中心はヴェネツィアだった。しかし、16世紀後半には、イタリア経済は衰微し始める。都市が発展し、人口(都市住民)が増えすぎた結果、食糧自給の破綻と、周辺の森林資源(=重要な船舶資材であり、燃料だった)の枯渇をもたらしたためである。代わって、バルト海沿岸の穀物・森林資源が注目を浴び、バルト海貿易の商品集積地として、アムステルダムが急激に台頭した。 一般に近世オランダ経済のバックボーンは東インド貿易だったと考えられているが、アジアは、確実な