1 はじめに 〜つまずきへのアプローチ〜 「私、算数が苦手だな。」 休み時間に私のところへやってきてAさんがつぶやいた。算数の授業で、時折不安げな様子を見せていた彼女の言葉が、私をはっとさせた。「苦手」という言葉から算数の学習が分からない・できないというつらさが伝わってきたのだ。Aさんのように苦手意識を持っている児童が他にもいるのではないかと思いを巡らせた。 「かけ算」は日常生活において活用する大切な考え方であり、算数を学ぶ上での基礎となる。私はAさんのつまずきに対応することが、学級全体のつまずきに対応することにつながると考え、「わかる」「できる」喜びを味わう授業づくりに向け、Aさんのつまずきに対する指導・援助の工夫を試みることにした。 <つまずきの例> かけ算とたし算の違いがわからない。 「◯個ずつ」「◯つ分の大きさ」の言葉の意味がわからない。または、うまく表現できない。 「△が1個分」