『妻はストーカーに殺された』という本がある。福岡のほうで、1997年10月28日、大学生が家に押し入り、著者の妻と母に包丁で切り付け、二人とも死に、しかし心神喪失状態だったため不起訴となった事件の、遺族が書いたものである。私はこの本を、書店か図書館で立ち読みしていて、ふと引っかかったことがある。 犯人は当時21歳、長女の高校時代の同級生で、その二月ころから、家に石を投げたり、無言電話がかかってきたりしていた。家側では、この男ではないかと目星をつけていろいろ調べていたが、ある時、電話のあとで「リダイヤル」するとその男が出た、と書いてあったのである。 リダイヤルして掛かったなら、誰かがその直前にその家からその男に電話したことになる。もう8、9年前になろうか、私はこれが引っ掛かり、この事件を担当していた現地の新聞記者に電話を掛けて聞いてみた。すると「いや、電話番号表示とか、じゃないですか」と言い