福島第一原発の「事故収束」を野田佳彦首相が宣言した。放射性物質の放出や汚染水の懸念も残り、絶対安全の保証はどこにもない。廃炉までの長き道のりを考えれば、幕引きとはあきれ返る。
福島第一原発の「事故収束」を野田佳彦首相が宣言した。放射性物質の放出や汚染水の懸念も残り、絶対安全の保証はどこにもない。廃炉までの長き道のりを考えれば、幕引きとはあきれ返る。
福島第一原発事故で、何度も放射性物質を含む汚染水が海に漏出したが、経済産業省原子力安全・保安院は「緊急事態」を理由に、法的には流出量は「ゼロ」と扱ってきたことが本紙の取材で分かった。今後、漏出や意図的な放出があってもゼロ扱いするという。政府は十六日に「冷温停止状態」を宣言する予定だが、重要な条件である放射性物質の放出抑制をないがしろにするような姿勢は疑念を持たれる。 原子炉等規制法により、電力事業者は、原発ごとに海に出る放射性物質の上限量を定めるよう決められている(総量規制)。福島第一の場合、セシウムなどは年間二二〇〇億ベクレルで、年度が変わるとゼロから計算される。 しかし、四月二日に2号機取水口近くで高濃度汚染水が漏出しているのが見つかり、同四日には汚染水の保管場所を確保するため、東京電力は建屋内のタンクに入っていた低濃度汚染水を意図的に海洋に放出した。 これら二件の漏出と放出だけで、原
東京電力は四日、福島第一原発の高濃度汚染水の処理システムのうち、淡水化するための蒸発濃縮装置の建屋内で約四十五トンの水漏れが見つかったと発表した。建屋外にも漏れており、約五百メートル先の海に流れ出た恐れもある。このシステムではストロンチウムは除去できず、漏れた水は、海水に放出できる基準の約百万倍という高濃度のストロンチウムを含むとみられる。 東電によると、四日午前十一時半ごろ、作業員が建屋の床一面に五センチほど水がたまっているのを確認し、装置を停止。放射性セシウムは除去後だったため、表面線量はガンマ線で毎時一・八ミリシーベルト程度。しかし、ストロンチウムが放出するベータ線は毎時一一○ミリシーベルトと高く、水に触れ続けると、やけどのような「ベータ線熱傷」を起こす恐れがある。
原発の損害賠償保険を引き受けるため、損害保険会社でつくっている「日本原子力保険プール」(日本プール)が、東京電力福島第一原発に対する損害保険の契約を更新しない方針を固めたことが分かった。東電は契約が切れる来年一月十五日までに、保険の引き受け手を見つけたり、保険額(千二百億円)相当の現金を供託したりしないと、福島第一が無保険の「違法状態」となる。 すべての原発は、事故が起きた場合に千二百億円を上限に賠償金が支払われるよう、保険加入などが原子力損害賠償法(原賠法)で義務づけられている。これを怠ると、原発は稼働できない。 地震や津波の場合は政府補償が適用されるが、問題になっているのは運転ミスによる事故などをカバーする民間保険の部分。 福島第一で加入している民間保険は来年一月十五日に契約が終わるが、日本プールは、炉心溶融などの重大な事故を起こした福島第一は、落ち着いてきたとはいえ、通常の原発とは比
関税を原則撤廃する環太平洋連携協定(TPP)をめぐる民主党内の議論は、九日の意見集約を目標に大詰めを迎えている。交渉参加の賛否は真っ二つに割れたまま。野田佳彦首相は十日にも交渉参加を表明する方向で調整しているが、党内では反対派が指摘する問題点に対し、推進派は説得力のある反論ができず、説得に苦心している。 (金杉貴雄) 党経済連携プロジェクトチーム(PT)は七日までに、計二十二回の総会を開催。党の重鎮や執行部に近い議員は大半が推進、容認の立場だが、実際に連日のPTの会合に出席して発言するのは、圧倒的に反対派が多い。
東京電力は26日、同社に在籍する天下り役人が8月末現在で、51人に上ることを明らかにした。これに対し枝野幸男経済産業相は同日の衆院予算委員会で「調べられる範囲で最大限調べたい」と述べた。 東電によると、電力業界を所管する経済産業省からの天下り役人はいないが、政府側との「密接な関係」が批判されそうだ。 公務員OBの内訳は、経営に対するアドバイスをする「顧問」が計3人で、国交省出身が2人、警察庁1人だった。実務を担う「嘱託」は計48人で、地方警察官出身が31人、海上保安庁7人、地方自治体5人、林野庁2人、気象庁2人、消防庁1人だった。
東京電力福島第一原発1~4号機の原子炉建屋やタービン建屋地下に、一日数百トンの地下水が流入している可能性のあることが分かった。汚染水処理の実績などから計算すると、五万トン強まで減っているはずだが、実際には八万トン強も残る。東電も地下水流入の可能性を認めており、地震で建屋地下の壁が損傷し、流入していることが考えられる。今後の収束作業に影響が出そうだ。 建屋からくみ出した汚染水の移送量や原子炉への注入量など東電が公表したデータを本紙が集計したところ、約十万トンあった汚染水は、十三日時点で約五万千六百トンにまで減っているはずだった。 しかし、実測の地下水位から東電が推計した汚染水残量の最新値は約八万千三百トン。移送量などから逆算した値とはほぼ三万トンの開きがある。 東電はこれまで、汚染水がなかなか減らない理由を、雨水の影響と説明してきた。福島第一周辺では、七月以降の三カ月間に三回まとまった雨が
東京電力福島第一原発事故で、本紙は、菅直人前首相が三月十五日未明に東電本店に乗り込んだ際の訓示の記録全文を入手した。現場からの撤退を打診した東電側に「放棄したら、すべての原発、核廃棄物が崩壊する」と警告し、「命を懸けてください」と迫っていた。菅氏は本紙のインタビューで「東京に人がいなくなる」ほどの強い危機感があったと明かしていたが、訓示の内容からもあらためて裏付けられた。 (宮尾幹成) 第一原発では当時、1、3号機が水素爆発を起こし、2号機も空だき状態の危機が続いていた。政府関係者の記録によると、菅氏は「(撤退すれば)チェルノブイリ(原発の事故)の二~三倍のもの(放射性物質の放出)が十基、二十基と合わさる。日本の国が成立しなくなる」と危機感をあらわにした。 その上で、「命を懸けてください。逃げても逃げ切れない」と、勝俣恒久会長や清水正孝社長(当時)ら東電側に覚悟を要求。「六十歳以上が現地に
東京電力が福島第1原発の「事故時運転操作手順書」のほとんどを真っ黒に塗りつぶし、衆院科学技術・イノベーション推進特別委員会(川内博史委員長)に提出していたことが7日、分かった。 同委員会が「事故原因の徹底的検証に必要」と提出を要求していた。東電は、知的財産や核物質防護上の問題があるとして第三者に公開しないように求めていたが、川内委員長は「中身がないので隠す意味がない。(東電は)求めたものを誠実に出してこなかった」として公開した。 手順書は12ページ。9ページ分は全て塗りつぶされ、読み取れるのは全部足しても十数行。
東京電力が先週の会見で「福島第一原発は高さ十メートル超の津波に襲われる可能性がある」と試算していたことを明らかにした。 東電は二〇〇八年に試算していながら放置し、原子力安全・保安院に報告したのは東日本大震災の四日前だった。「高さ九メートル超の津波が来る」という別の試算もあり、こちらは〇九年に保安院に報告している。
原子力関係予算を握る経済産業省と文部科学省が福島第一原発事故の一カ月後、原発の立地自治体などに交付金を支給する規則を全面改正し、新増設時の交付額を増やす一方、既設の原発では発電実績に応じて交付額を決める方式に変更していたことが分かった。事故収束に向けた見通しが立たず、原因究明もままならない時期に、新増設や運転を後押しする改正をしていたことになる。 改正したのは「電源立地地域対策交付金」の交付規則。四月十三日に改正され、海江田万里経産相と高木義明文科相の連名で、同日付の官報に告示した。経産省原子力安全・保安院が福島第一原発事故の国際評価尺度を、旧ソ連チェルノブイリ原発事故と同じレベル7に引き上げた翌日のことだった。 改正規則では、原発を新設したり増設したりする際の交付金の単価を増額。発電能力(出力)百三十五万キロワットの原発を新設する場合だと、運転開始までの十年間に立地自治体へ支給する額は、
東日本大震災発生後の津波で、福島第二原発の原子炉を冷やす機能の一部が三日間失われていたことが十日、東京電力が公表した資料などで分かった。核燃料の過熱で原子炉格納容器が損傷する恐れもあり、増田尚宏所長は国の事故調査・検証委員会の調査に「人海戦術でかろうじて対応できた。人手が足りなければ無理だった。危機一髪だった」と説明。福島第二も危機的な状況に陥っていたことが浮かんだ。 東電によると、三月十一日の震災直後、敷地の海側にあった海水熱交換建屋が津波で浸水。1、2、4号機で原子炉を冷やす海水をくみ上げるポンプが使えなくなった。配電盤も水に漬かり、電力供給が停止。原子炉が冷やせなくなった。 東電はポンプのモーターを交換するとともに総延長約九キロの仮設電気ケーブルを引いた。発電所内だけでは資材が足りず柏崎刈羽原発(新潟県)からトラックで陸送したり自衛隊のヘリコプターで運んだりした。夜間にヘリが着陸する
経済産業省資源エネルギー庁が原発に関するメディア情報を監視してきたことが、本紙の調べで分かった。本年度発注分を含めると、外部委託費の総額は四年間に約一億三千万円に上る。昨年度までは、いずれも電力会社役員らが理事を務める財団法人が受注していた。 同庁の資料などによると、昨年度までの三年間は「電源立地推進調整等事業(即応型情報提供事業)」として、新聞や雑誌の記事を監視する事業を年約一千万~約二千四百万円で外部委託していた。 委託先は、東京電力の勝俣恒久会長が非常勤の理事を務める「日本科学技術振興財団」や、経産省原子力安全・保安院のOBや元原子力安全委員会委員長らが役員になっている「エネルギー総合工学研究所」といった財団法人ばかりだった。 事業は、一部に同庁ホームページ(HP)にあるQ&Aコーナーの更新が含まれているが、主には「不正確または不適切な報道を行ったメディアに訂正情報を送る」こと。ただ
中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)の真下を通り、室戸岬(高知県)に延びる長さ四百キロの巨大な活断層が存在する可能性があることが、鈴木康弘名古屋大教授(変動地形学)らの研究で分かった。中電は独自の調査結果で活断層の存在を否定しているが、東日本大震災を受け、専門家らは耐震評価の見直しを訴えている。 日本列島周辺の海底を調査した海上保安庁のデータを基に、鈴木教授と中田高広島大名誉教授らが二〇〇九年に詳細な海底地形図を作製し、研究を進めている。その結果、浜岡原発周辺の太平洋岸から室戸岬付近まで四百キロにわたり幅十~三十キロ、深さ三百~千メートルの海底のたわみ「撓曲(とうきょく)」を確認。「遠州灘撓曲帯」と名付けた。
原子力安全委員会ワーキンググループ報告書は、全交流電源喪失による炉心損傷の可能性を指摘していた(木口慎子撮影) 福島第一原発事故の要因になった長時間の全交流電源喪失(SBO)について、原子力安全委員会のワーキンググループ(WG)が一九九三年、炉心損傷を招く可能性があると認めながら、「考慮する必要はない」とした国の安全設計審査指針を追認する報告書を出していたことが分かった。安全委は報告書を公表せず、その後の安全対策にも生かしていなかった。 安全委の班目(まだらめ)春樹委員長は「『SBOを考えなくてよい』と書いたのは最悪」と認めた上で「前から安全規制改革をやっていれば事故は防げた」と述べ、経緯を検証する方針を明らかにした。 WGは原子力施設事故・故障分析評価検討会に設けられ、五人の専門委員と四人の外部協力者が参加。九一年十月から九三年六月にかけて非公開で十二回の会議を重ね、国内外のSBOの規制
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