近年の経済学の研究では、学力の決定要因の1つとして「ピア効果」―同じクラスの友人の学力が本人の学力に与える影響―に注目が集まっている。しかし、過去の研究では、データの制約もありはっきりとした結論が得られていない。そこで本研究では、埼玉県(さいたま市を除く)の公立小・中学校の全生徒を対象として2015年および2016年に実施された「埼玉県学力・学習状況調査」の学力調査の個票データを用いて、付加価値モデルの教育生産関数を推定し、負のピア効果の存在を確認した。これは、ある生徒が平均的な成績が良いクラスに所属した場合、翌年当該生徒の成績が下がっていることを意味しており、クラスの平均的なIRTスコアが1上昇すると、国語では本人のスコアは0.09~0.23、算数・数学では0.16~0.27下がる。成績のよい同級生がいることによって、自分の相対的な学力が低いという自己認識を持ち、学習意欲が低下するという