「あの人が行くと、認知症でいつも介護に抵抗している人も、なぜだか穏やかになる」そんな介護の達人技の正体が明らかになりつつある―。実は今、介護の世界に科学を導入する取り組みが進んでいるのだ。ベテランの勘頼みだった職人技を最新機器やデータ分析によって見える化。そのノウハウを共有し、業界全体のスキルアップをはかるプロジェクトだ。京都大学では、ケアの際の視線に注目。アイコンタクトの頻度、顔と顔の距離など、被介護者に安心感を与えるための秘訣がわかってきた。一方、東京都医学総合研究所では、科学的なアプローチに基づき、暴言や興奮といった認知症の「行動・心理症状」をメッセージとしてとらえ、減らすためのプログラムを開発した。導入した場合、行動心理症状の頻度が7分の1に減少するほどの改善効果が認められたという。自宅で長く過ごすことや介護費用の抑制にもつながると期待される“科学的介護”。最新の取り組みを追う。