今年はこれまでと違った全国ツアーになると話す稲川淳二さん=大阪市北区で2023年6月8日、梅田麻衣子撮影 なんだか変だなあ……怖いなあ……嫌だなあ……。 怪談家・稲川淳二さんの語りはゾクッとするほど恐ろしいのに、どこか優しさを感じさせる。御年75歳で、恒例の全国ツアーは31年目に突入した。長年にわたる活動の原動力には、亡き次男の存在がある。 「怪談って、心を伝えてるんですよ。『こんな(恐ろしげな)しゃべり方をしないと』って勘違いしてる人がいるけど、大切なのは気持ち。自分が夢中になって、お客さんと楽しむのが一番なんですね」。熱っぽく、語り手の極意を口にする。 工業デザイナーとして活動していた1970年代半ば、深夜ラジオのパーソナリティーに抜てきされ、タレントとして人気に火がついた。93年から「怪談ナイト」と銘打った全国ツアーを毎年開催し、今年で1000公演を超える。独特の擬音や言葉の緩急を操