現政権が、経済活動に大きな影響を与える会社法の改定や上場会社の情報開示の強化に向かっている。 取りあえず問題なのは、上場会社の役員報酬が1億円以上の場合は、氏名と額の開示を求めた3月末の内閣府令改定である。 これが改正か改悪かは、同様の改定を行った米国の例が参考となる。米国の経営者の平均年俸は、1976年では従業員の30倍程度であったが、90年には約100倍となった。 そこで、経営者の年俸を公表すれば、抑制効果が上がるだろうと考えた米政府は、92年に詳細な開示義務を課した。その結果格差は一時的に縮小したが、その後は以前よりも更に大きく開いてしまった。つまり、この制度改革は、経営者の嫉妬(しっと)に火をつけ、強欲を解き放ち、経営者間の報酬競争をあおってしまったのである。 古今東西、美徳や悪癖も含め、人の性(サガ)に差異はない。わが国の経営者報酬が、欧米に比べ著しく低いのは、廉恥と嫉妬