1908年に中国で出版された『元朝秘史』。左側の大文字は漢字で表されたモンゴル語、右側の小文字は中国語訳と注釈。 『元朝秘史』(げんちょうひし)は、中世モンゴルの歴史書。『モンゴル秘史』と呼ばれることもある。チンギス・カンの一代記を中核に、その族祖伝承から後継者オゴデイの治世の途中までの歴史が記されている。作者は不明。成立年は諸説あるが、13世紀中とする見解が主流である一方、14世紀前半であるとする説得力ある仮説も存在する(後述)。 元朝秘史は元々口承文学である。元朝秘史の現存するテキストは、12巻本と15巻本がある。原典はウイグル文字によるモンゴル語で書かれたと考えられているが、既に失われている。ただ、17世紀のモンゴル語年代記『アルタン・トブチ』(黄金史)に元朝秘史と同系統の記述が含まれていることが知られ、モンゴル語による写本が存在した証拠と考えられている。 現存するテキストのうち12