私たちは一部の成功者の話にばかり耳を傾けがちだ。しかしそこには落とし穴がある。「失敗や絶滅の事例を知ることで、生存バイアスに惑わされずに物事の見方を補正できる」と話すのは『理不尽な進化 増補新版──遺伝子と運のあいだ』の著者で文筆家の吉川浩満氏。『世界「失敗」製品図鑑』の著者である荒木博行氏と、失敗に学ぶ効用について語ってもらった。 生存バイアスに引っ張られないために 荒木博行(以下、荒木):これまで吉川浩満さんの著作や、吉川さんと文筆家の山本貴光さんとのYouTubeチャンネル「哲学の劇場」を興味深く拝見してきました。 昨年、文庫化されて版を重ねている吉川さんの著作『理不尽な進化 増補新版──遺伝子と運のあいだ』をあらためて拝読しました。生物の歴史を「絶滅」という視点から捉えた点がユニークで、進化論にまつわるイメージの変遷や、進化論がいかに私たちの認識のありように影響を与えてきたかを解き