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ブックマーク / d.hatena.ne.jp/zoot32 (29)

  • [映画]『恋人たち』 - 空中キャンプ

    『恋人たち』は剥き出しの人生についての映画である。生きることを豊かにしてくれるさまざまな飾りつけを、すべて取り外してしまった先にあるような物語である。人生が虚無と殺伐に満ちていることを、われわれはよく知っている。ゆえに人びとは、それぞれのしかたで、剥き出しの人生を直視しないよう細心の注意を払う。会話の際には冗談を言い、相手の話をきちんと聞き、たくさんの良書を読む。映画音楽に触れ、美しい衣服を身に着け、部屋を清潔に保つ。なぜそのようなことをするのだと言われても返答がむずかしい。生きるとはそうした、巧妙な回避の連続によってしか成立しないためだ。さもなければ目の前にはただ剥き出しの人生があるのみで、そうした虚しさに直撃しながら耐えられるほどわれわれは強くない。 だからこそ、私は『恋人たち』に反発を覚えた。すべてがあまりにも剥き出しで、登場人物たちは不満ではちきれそうになっていたためだ。少なくと

    [映画]『恋人たち』 - 空中キャンプ
  • 『アクト・オブ・キリング』 - 空中キャンプ

  • 『鑑定士と顔のない依頼人』 - 空中キャンプ

    内容に触れているので、未見の方は注意 ことによると、自分自身を甘やかしすぎなのではないかと感じることがある。ひとり暮らしで、仕事以外に何の制約もない生活をしている僕は、持てるすべてのリソース(時間、金、労力)を自分自身だけに注ぎ込むことができる。映画館で好きな映画を見て、その後、グルメで調べたカレー店へ行き、おいしいカレーべる。書店を物色してから家に帰り、好きな小説をひたすら読みつづける。誰にも注意されず、何も指摘されない。嫌いなこと、退屈なこと、自分以外のためになることなどいっさいしないまま、好きなように時間を使うことができる。僕は、そのような生活をもう二十年以上すごしてしまった。率直にいって、僕はこの生活様式をとてつもなく気に入っている。 そうした生活を長く続けていくことで、孤独な者の生活はひとつの完結した小国の様相を帯びる。その者にとってもっとも心地よく、たしかな満足を与えてく

    『鑑定士と顔のない依頼人』 - 空中キャンプ
    dazed
    dazed 2014/01/10
    『鑑定士と顔のない依頼人』良かったわ
  • [映画]『ゼロ・グラビティ』 - 空中キャンプ

    内容に触れているので、未見の方は注意 コーマック・マッカーシーの小説『ブラッド・メリディアン』(早川書房)でもっとも印象に残っているのは、男たちが砂漠をひたすら移動しつづけるくだりだ。暴力的な描写の多い作品だが、もっとも身に沁みて過酷であると感じたのは、直接的な暴力よりも砂漠の移動場面だった。貴重な飲み水が尽き、飢えと乾きに苦しめられながら、砂ばかりの土地を移動するほかない男たちの姿を想像するにつれて、読んでいるこちらまで喉がからからになるような感覚がもたらされるのだ。水が飲めないことの恐怖が迫ってくるようだった。むろん、これは作者の筆力に拠る部分が大きい。このような感覚を、文章を通じて読者に与えることのできる書き手は限られるだろう。読了後、蛇口をひねれば清潔な水が出てくる自分自身の環境が、何か信じられないことのようにおもえたのを覚えている。 感覚に強く訴えるタイプの作品は記憶に残る。僕に

    [映画]『ゼロ・グラビティ』 - 空中キャンプ
    dazed
    dazed 2013/12/15
    たしかに、この映画見ると、重力があって足が地に着くってことがいかに稀なことか思い知らされる。重力と空気と水という要素が重なった偶然というのは、ほんとにすごいことなんだな。
  • [映画]『きっと ここが帰る場所』を見たゼ! - 空中キャンプ

    dazed
    dazed 2012/07/03
    おもしろそう “英バンド、キュアーのボーカルであるロバート・スミスをモチーフにしたゴスメイクの元ロックスターである主人公(ショーン・ペン)” [映画]『きっと ここが帰る場所』を見たゼ!
  • 『戦火の馬』を見たゼ! - 空中キャンプ

    dazed
    dazed 2012/03/05
    “ことほどさように、『戦火の馬』が描きだすのは、われわれの世界を本当に推進させているのは、理屈を越えたエモーションなのではないかというテーマである”
  • 私たちまだ死んでない - 空中キャンプ

    サリンジャーは、「ジェローム・デイヴィッド・サリンジャー」という、それだけですぐにユダヤ系だとわかってしまう名前を隠すために、ずっと、JDサリンジャーと名乗っていたのだという。かくいう私も、ちょっとだけそれに似た理由で、たかこ BLと名乗っている。BLがなにを略しているのかを、私は口にすることができない。だから私は、行儀のいいタクシー運転手みたいに、余計なことをいわず、どこへいってもできるだけおとなしくしている。 私たちの日での生活はいくぶんきゅうくつだ。いつも、誰かに見つかってしまわないかとそればかりを心配している。三者面談のときには、お父さんにきちんとひげをそってスーツを着てもらうようにおねがいしなければいけなかった。「ちゃんとしたスーツを着てね」と私はいった。「なるべく原理主義者っぽくないやつ」。お父さんは肩をすくめて、「わかってるよ。俺は三者面談にはターバンを巻いていかない主義な

    dazed
    dazed 2009/09/11
  • 特別な日 - 空中キャンプ

  • 『びんぼう自慢』/古今亭志ん生 - 空中キャンプ

    だめな人だとは知っていたが、ここまでだめだとはおもわなかった。志ん生人が半生を語り下ろしたこのを読みながら、わたしはあらためて、だめ人間の威力について考えざるをえない。この人はほんとうにだめだ。わたしは感動すら覚えながら、彼の半生を読み進めた。 志ん生が困るのは、落語だけは天才、というところで、そうでもなかったら、こんなめちゃくちゃなおっさんなどとてもまともに生きていけない。人がとことんまでだめを極めたとき、そこには聖性を帯びたなにかが立ち上がるが、戦前の志ん生には、ほんとうにだめな人にのみが持つうつくしいオーラ的ななにかが見えるような気がする。 なにより志ん生がひどいのは、誰の金であろうと平気で使い込んでしまう横領癖だ。たちがわるい。この人が「寄席をしくじった」「師匠をしくじった」という表現をするとき、たいていは使い込みか横領がばれて出入禁止になっている。父親のだいじにしていたキセル

  • 『サンシャイン・クリーニング』を見たゼ! - 空中キャンプ

    渋谷にて。よかったです! 負け犬(ルーザー)映画のやるせなさ、せつなさを踏まえながら、同時に、おもわず劇場の座席から飛び跳ねたくなるようなポジティブさがきちんと備わっている。劇中、ここぞという場面で見せる詩情、ポエジーも実にうつくしい。ふとしたきっかけから、事件現場の死体を清掃する特殊清掃業の仕事をはじめた姉妹の物語。 なにより『リトル・ミス・サンシャイン』の製作スタッフがかかわった、サンシャインシリーズ第二弾ということで、LMSがすきなわたしはとてもたのしく見れました。主演は『魔法にかけられて』のエイミー・アダムス。コメディエンヌの才能をばっちりと発揮していてよかったです。物語の方向性じたいも近いものがあったし、なによりアラン・アーキンの役どころは、LMSと同じであって、ちょっとよくわからないところはあるけれど、すべてを承認してくれるやさしいおじいちゃん、というのが泣けました。 この映画

    『サンシャイン・クリーニング』を見たゼ! - 空中キャンプ
  • きらら - 空中キャンプ

    わたしがもし女性として生まれてきたときのために、親が用意していた名前は「きらら」だった。そのことを知らされたのは、おそらく小学校の四年生くらいだったはずである。びっくりした。自分がもし女の子として生まれてきたら、きららとして生きていかなければならなかったのだ。そんなパラレルワールドをふとのぞいてしまったような気がして、子どものわたしはなんだかずいぶん複雑な心境になったことを覚えている。 「俺はきららなのか」 「よりにもよって、なんできららなんだ」 「ぜったいに名前負けするじゃないか」 きららになった自分は想像がつかなかった。きっと、すごくかわいくなくてはいけない。近くに寄るといい匂いのする女の子でなくてはいけない。自転車のかごにフランスパンを入れて走らなくてはいけない。それもこれも、きららという、あかるく輝く星のような名前に負けないための努力だ。女の子になったわたしは、自分の名前に負けない

  • 『愛を読むひと』を見たゼ! - 空中キャンプ

  • 静岡にいったことはありますか - 空中キャンプ

    帰りの電車のなかでおかしな男に絡まれた。きっかけは、閉まりかけのドアにわたしが飛び込んだことだ。むりに入ったので、閉まるときに、ひじのあたりががつんとドアにぶつかった。すると、近くにいた土木作業員風の若い男(坊主頭、ピアス)がわたしに向かって、「迷惑なんだよ、オイ」「オマエみたいな奴がいるとむかつくんだよ」と悪態をつきはじめた。もとはといえばわたしが悪いのだが、ややこしいことになった。 しばらく無視をしていたが、「聞こえてるんだろう、テメー」「オイ、このやろう」などと言い続けるので、しかたなく急いで別の車両に移動した。もう、まいったなあ。ところが、移動したとなりの車両でしばらく立っていると、あろうことか、そいつもわたしを追ってくるではないか。どうしていいかわからない。男は「逃げんじゃねえ、オイ、テメー」と因縁をつけてくる。うーん、ややこしすぎる。しばらくうしろを向いて立っていたが、さすがに

  • http://d.hatena.ne.jp/zoot32/20090519

  • monkey business 2008 Spring vol.1 - 空中キャンプ

  • 2008-06-28 - 空中キャンプ|[映画]「告発のとき」を見たゼ!

  • http://d.hatena.ne.jp/zoot32/20080419

    dazed
    dazed 2008/04/21
  • 「自分探しが止まらない」/速水健朗

    速水健朗新刊(ソフトバンク新書)。おもしろかったです! 前作「タイアップの歌謡史」はやや趣味性のつよい題材でしたが、今回はより一般的、また誰もが興味を示すであろう旬な話題を取り上げ、タイトルや帯の扇情的な雰囲気もやる気じゅうぶん。全体が、売れる感に満ちあふれている。来たな、とおもった。中田英寿の引退メッセージを引用したイントロダクションから、「自分探し」というキーワードが様々に展開していく構成にもぐっときました。 とはいえ、わたしはこのを気軽に読める気がしなかった。「いるよねー、探しちゃってる人」と、のんびり嘲笑できる立場にはないような感じがしたのである。たとえばポジティブ・シンキングについて。速水はポジティブ・シンキングと自己啓発の関係性を指摘しているが、このあたりはちょっとどきっとしました。なぜならわたしは、ふだんから「良いことしか言わない」「ポジティブなこと以外はいっさい口にしな

  • 「死刑」/森達也 - 空中キャンプ

    すばらしいでした。「A」「職業欄はエスパー」に比肩するクオリティを持った、森達也のあらたな代表作のひとつだと感じた。死刑という、判断がどこまでもむずかしいテーマを扱いながら、「他者を想像する」とはいったいどういうことなのか、何度も立ち止まっては悩む、森の真摯な姿勢に胸がふるえました。読み終えておもう。彼のいうとおり、世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい。だからこそ、他者を想像する営みだけは決して忘れたくない。きっとこのは、死刑制度について考察されたテキストであると同時に、他者という豊かな、かつ不可解な存在をどうやって想像していくか、その試みのためのテキストでもある。 わたし自身がこの先、司法から死刑を宣告されることはおそらくないとおもう。わたしはたぶん、死刑にならない。わたしが死ぬのは、病気かも知れないし事故かも知れない。父親は脳腫瘍で死んだから、わたしにも同じ病気が起こる可能性はあ

  • 空中キャンプ ■「『人間嫌い』のルール」/中島義道

    中島義道という人のはふしぎである。読むとイヤな気持ちになる。でも、どこか説明のつかないおもしろさもあって、つい読んでしまう。それは「真実を抉るのはえてして不快である」ということの証左なのかも知れないけれど、やっぱり読後感はわるいのね。彼の「ひとを愛することができない」(角川文庫)というは、今年読んだ中でいちばん後味のわるいものだったのだけれど、このについてなにかを書こうとおもったら、それだけでがやってきて止めた。ちょうになったの。中島は偽善やタテマエを嫌うし、ある種の共感を強制されることをどこまでも拒否する。それが徹底しているので(葬式で泣く人を見ると不快だ、とまでいう)、こんなこと書いちゃっていいのかしら、すごいなあ、とおもいながらわたしは彼のを読むことになる。「人間嫌いのルール」(PHP新書)も、かなり身も蓋もない内容でしたが、なるほどとおもいつつ読みました。 中島の人間嫌

    空中キャンプ ■「『人間嫌い』のルール」/中島義道