2021年1月下旬発行予定、『1つの定理を証明する99の方法』(フィリップ・オーディング 著・冨永星 訳)のご紹介です。 同書の「はじめに」を、発行に先駆けて公開します。 『1つの定理を証明する99の方法』はじめに 著:フィリップ・オーディング 訳:冨永星(とみなが・ほし) 1610年4月9日、ガリレオの『星界の報告』の新刊見本を受け取ったヨハネス・ケプラーは、すぐにファンレターを書いた。「自分自身の経験という支えもなしに、何のとまどいもなくあなたの主張を受け入れるわたしは、きっと無謀に見えるでしょう。ですが、もっとも造詣の深い数学者を信じずにおられましょうか。その様式(スタイル)そのものが、その方の判断が健全であることの裏付けとなっておりますのに」と認(したた)めたのである。わたしたち現代人には、数学者の業績を様式の観点から捉える習慣がない。たしかに証明は論証の一つの形ではあるが、証明さ