爆発的にヒットしたあのギャグ漫画「がきデカ」の作者は、35年ほど前から小説を書いている。視覚表現から言語表現へと軸足を移しても、不思議で不条理でユーモアに満ちた山上ワールドは唯一無二。来週3日(月)から本紙で連載が始まる長編小説「金鳳花のフール」は、タイトルからして謎。どんな小説なのか予測できない。果たして読者をどんな世界に連れていってくれるのだろう。 物語は、奇態な葬儀の俯瞰図から始まる。主人公の絵本作家・綾瀬純一がA3サイズのケント紙いっぱいに描き込んだ一枚の絵。そこでは死者も生者も、本性をむき出しでやりたい放題。グロテスクで滑稽な人間悲喜劇が繰り広げられている。広角レンズでとらえたような斎場のパノラマは、漫画でいえば見開き扉だろうか。 「主人公が絵本作家ですから、まず彼の絵を読者の視界(頭の中の)に届けたかったのです。このシーンは文章表現だからこそ楽に書けました。これが視覚表現だとい