◇Lawrence Repeta(明治大学法学部特任教授) 大阪市の橋下徹市長は2月、市職員へのアンケート調査で、労働組合活動や支持する政治家などに関する個人情報を強制的に答えるよう命じた。命令が許されるのならば日本の民主主義社会にとって大きな後退になるだろう。 米国史に詳しい人なら、プライバシーや結社の自由に対する同様の攻撃があったのをご存じだろう。最も有名なのは1950年代にマッカーシー上院議員らが率いる米上院小委員会が俳優や作家、学者らの政治歴を調べた例だ。共産主義が米国を席巻するという恐怖感から行われ、後に「赤狩り」と呼ばれた。 職員への調査で、橋下氏は「正確な回答がなされない場合には処分の対象となりえます」と述べたが、マッカーシー議員らの調査を拒否した人たちも処罰によって脅かされた。多くの作家や大学教授が政治信条や政治活動の秘密を守る憲法上の権利を主張して、仕事を失うなどした。