太平洋戦争の戦没者らを弔った陸軍墓地の墓石が、所有者不明のまま放置されているケースがあることが分かった。 福岡市では墓が損壊しても修復されず、山口市では草も刈られずに密林のようになった時期があった。遺族らは「国に召集されて命をささげた以上、国や自治体が責任を持って管理してほしい」と訴えている。 福岡市中央区にある谷陸軍墓地。日清、日露、太平洋戦争の戦没者らの遺骨約1万5000柱を納めた高さ数メートルの石碑が10基ほど並ぶ。その片隅では、寄りかかった樹木に押されて墓石1基が倒れている。「修復を行政に頼んでも、また断られるだろう」。8月上旬、元陸軍中尉で建設会社会長の菅原道之さん(89)(福岡市)はつぶやいた。 陸海軍の軍用墓地は戦後、82か所の所有権が大蔵省(現財務省)に移転。さらにその一部が自治体に譲与、無償貸与されるなどした。谷陸軍墓地は1969年から福岡市が無償で借りている。2005年