《書評》 隅谷 三喜男 編著『日本労使関係史論』 評者:二村 一夫 1 本書は、事実上、隅谷三喜男教授の還暦記念論文集の第1集である。(注1) 「事実上」というのは、後輩や教え子がそれそれ論文をもちよって先生に献呈するという通常の記念論文集とはちがって、還暦を祝われた隅谷教授を中心に進められた共同研究の成果をとりまとめたものだからである。 共同研究のテーマは〈日本における労資関係発達史の実証的研究──明治末期より第二次大戦に至る──〉であり、そもそもの意図は、隅谷教授の記念碑的業績『日本賃労働史論』の続きをやる、ただし「一般的な体裁のよい通史をめざすのではなく、手わけをして、まず肝心かなめの場所に日本資本主義の岩盤にまで達する確かな手応えのあるクイを打ち込んでみたい、というにあった」(あとがき)。 こうして選ばれた「肝心かなめの場所」は次のとおりである。 第1章 工場法体制と労使関係 隅