能登半島の最先端部に位置する石川県珠洲(すず)市三崎町伏見。海沿いから山側へ入った細い路地沿いに、その大きな木造古民家は建っていた。築約200年ながら元日の能登半島地震の激しい揺れにも耐え、瓦が剝がれたりする程度の被害にとどまったという。 6代目当主で珠洲焼作家の坂本市郎さん(63)が自宅で妻、信子さん(55)と営む古民家レストラン「典座(てんぞ)」。2月から週末の昼営業を再開したが、信子さんは同業者と作った合同会社で9月に市中心部の道の駅「すずなり」隣に建てた仮設店舗に「すずなり食堂」をオープン予定。当面は新店舗に専念する方針だ。 「復旧復興の源は、やはり食。人が集まるのは食べる場所です」 信子さんがしみじみと言う。地震以降、炊き出しに無料弁当…と、ひたすら料理を作った約8カ月間だったのだ。 発災時、信子さんは半島南側の鉢ケ崎海水浴場そばにあるホテルのレストランでツアー客の夕食準備中だっ